夜ラチ2003
「幕間」


presented by
黒417



突然の拉致、監禁、そして手ひどい陵辱。
どうしてこんなことをするのか、どうして自分なのかと、しゃくりあげながらの問に、男は静かに微笑む。
「何度も教えてあげたでしょう?愛しているからこうするんですよ」


いつも触れていたいから、その目で自分だけを見てほしいから、他の誰にも見せたくないから、自分だけのあなたでいてほしいから。
だから攫って閉じ込めた。あなたを愛しているから……ただ、それだけ。


男は、泣きじゃくる体を抱く腕に力を込めた。
高耶さん……あなたにも、今にわかる。

男は「お腹すいたでしょう、何しろお腹をからっぽにしてしまいましたからね」と笑ったが、重なるショックと衰弱で、今の高耶にはとてもじゃないが食欲などない。



抱きしめてくる腕の中で泣くだけ泣いて、子供のように泣き疲れ、自分では立つこともできなくなってしまった高耶を、男は清潔なシーツを張り直したベッドに運んで横たえた。
精神状態が不安定な今の高耶は、いつ爆発して、自分を傷つけるかもわからない。
男は無抵抗の手を取って、片方づつ恭しく口づけては、そっと手錠を嵌め、鎖をベッドヘッドに繋いでやった。


ベッドに両腕を拘束され、あられもなく身を投げ出した高耶の望みはただ一つだった。
少しの時間でも構わないから、一人にしてほしい、と。
男はその願いを聞き入れた。
ベッドカバーを胸まで引き上げてやり、前髪を掻きあげて額に口づけてやる。
「少し、休んでいて下さい。あなたの好きそうなものを用意してきますから」

そうして、男が出ていき、ようやく一人になれた高耶の口から、堪えきれない嗚咽が洩れた。





数時間後。食事のトレイを手に男が高耶の元を訪れると、高耶はベッドカバーに肩までくるまって、子供のように体を丸くしながら、ガタガタと震えていた。
「高耶さん……?」
そっと顔を覗き込むと、苦しげに眉根が寄せられ、呼吸もひどくつらそうだ。
額に手を当てると、驚くほど熱い。
「高耶さん……!」
名前を呼ばれて、うっすらと目を開けた高耶は、男の姿を認めても、もはや怯えた様子や拒絶するそぶりは見せなかった。変わりに、ひどく疲れたような掠れた小声で「寒い…」と訴えた。
どうやら、ショックで熱を出してしまったらしい。

男はとりあえず、自分が着ていた上着を脱いで、ベッドカバーの上からかけてやりながら安心させるように囁いた。
「熱があるようですね……大丈夫だから、心配しないで」
そうしておいて、救急箱から体温計を取りだし、口に銜えさせる。
数十秒後、体温計が示したメモリを見て、男は眉をしかめた。
9度近い高熱が出ている。
男は救急箱から解熱剤のカプセルを取り出すと、「お薬ですよ」と囁いて、自ら、水とともに口に含んでいとしい唇に顔を寄せた。
「……ン……、」
男の唇が触れた時、高耶は一瞬、身を固くしたが、抗う気力もなかったのだろう、抵抗はせずに素直に薬を飲み込んだ。

冷たい水とともに、カプセルが喉を通っていく。
高耶が自分の口から、大人しく薬を飲んでくれたことで、男は胸を熱くしながら、バスルームから持ってきた洗面器に水と氷を入れ、冷やしたタオルを固く絞って額に乗せてやった。

衰弱しきった体は、強い解熱剤の作用で、すぐに深い眠りに落ちていった。
「大丈夫……心配しないで。すぐによくなりますからね……」
優しい囁きを、子守唄のように聞きながら。



高熱で朦朧とする中、時折、意識が戻る度、男が自分の髪を撫で、笑いかけていたような気がする。

いったい、どれぐらい眠っただろうか。次にその部屋で高耶が目覚めた時は、すっかり熱も下がって、体もだいぶ楽になっていた。
「高耶さん…気がついたんですね。気分は如何ですか?熱は?」
すかさずベッドサイドに付き添っていた男が、手を伸ばして額に手をあててくる。
「……よかった。下がったようですね」
ホッとしたように微笑む男を、高耶はひどく戸惑ったように見上げている。
この男は、ずっと寝ずに自分の側についていたのだろうか?



「高耶さん、起きられそうですか?」
問いかけに、高耶は黙って頷いた。
「よかった。高耶さん、ずっと何も食べてないでしょう。おかゆを用意してありますから……それと、何か飲み物を持ってきます。待っていて下さいね」
そう云って、男は一旦、部屋を出ていくと、まもなく食器を載せたトレイを手に戻ってきた。

前手錠のまま、ベッドヘッドに寄りかかるように起きあがった高耶の前に、病院で使われているような、ベッド用のテーブルが用意される。
目の前に置かれたトレイには、湯気を立てた白がゆと、メロンやオレンジと云ったカットフルーツが添えられ、ミネラルウォーターと冷たい牛乳が用意されていた。

「手錠……外してくれよ……このままじゃ、食えない……」
小声で訴えるが、男は笑を浮かべたままやんわりと首を振る。
「その必要はありませんよ。あなたの世話は全部、俺がこの手でしてあげるって云ったでしょう?」
そして、当然のように高耶の横に腰掛けると、かゆの入った皿を手に取り、スプーンですくって口元に持っていった。
「お口を開けて……」
本気でこの男は、自分の世話を何から何までするつもりらしい。それを今更ながら悟って、高耶は半ば自棄気味に口を開いた。どうせ逆らっても無駄なのだから。
男が幸せそうに微笑む。
「いい子ですね……」

そうして、子供が親に食べさせてもらうように、一匙づつ、ゆっくりとしたペースで高耶はかゆや、フルーツを平らげた。
こんな異常な状況での食事なのに、ちゃんとものが食べられて、しかもおいしいと感じる自分が高耶は信じられなかった。もう、自分はおかしくなりかけているのかもしれない。





食事の後は、再び、抱き抱えられてバスタブに運ばれた。ステンレス製の手錠は、濡れても大丈夫だからと、やはり外してはもらえなかった。
それでも、高熱で汗をかいたせいか、ぬるめの湯が、肌に心地よくて。

湯の中で膝を抱える細い背を、背後から抱きしめ、滑らかな首筋に顔を埋めながら、男が囁いた。
「熱が下がって本当によかった……」
「………」
抱きしめる腕が、いとしい体を確かめるように両肩を滑る。
「高耶さん……」
名前を呼ばれて、首筋に口づけられ、ピクッと震える体。
高耶を抱く男の指は、堪えきれずに愛撫へと変わる。前に回された指が、胸の突起に触れ、もう片手が脇腹をすべり、子供のようにすべすべの下肢へと下りていく。
「やっ……!」
嫌がって閉ざそうとする膝を、男は許さない。
背後から掬い上げるように、両膝裏を掴まれて湯の中で広げられ、あるべきものがなくなって、より敏感になった其処を撫で上げられて、高耶は声を上げて身を捩る。
「やっ、そこっ……」
「じっとして……」
諭すように囁かれて、大きな掌で其処を袋ごと握り込まれ、やんわりと揉みしだかれて、若いペニスは刺激に耐えられずに湯の中で少しづつ形を変えていった。

「んっ……クッ……」
「気持ちいいの……?ほら……俺にこうされて、高耶さんのぼうやは大きくなってきましたよ……?」
あなたがあんまり可愛いから、俺のもこんなになってる。
淫らな囁きとともに、裸の背に熱い昂ぶりを押しつけられて、高耶はカッと顔を紅くした。
「やっ……なおっ……」
口をついて零れる喘ぎには、躊躇いや羞恥や戸惑いはあっても、初めてや二度目の時のような恐怖や嫌悪、激しい拒絶は感じられない。

「高耶さん……」
いとおしくて、狂いそうで。ココもココも、あなたのすべてを愛してあげたくて。

男は抱き寄せた耳朶に熱く囁いた。
「高耶さん……我慢できない」



To Be Continued.


第七夜…にイク前に、ちょっとコーヒーブレイクってことで幕間ですの(コラ;お約束の発熱シーン(笑)が書きたかったんです…v 
病気の時、優しくされると弱った心がきゅんとね……えへへvv

前回、あんなこともこんなこともされちゃって、人間廃業したせいか、泣くだけ泣いて、すっきりしたのか、それとも悟ってしまったのか(笑)高耶さんはもう直江に触れられても、怯えたり、嫌がったりはしませんのv
なんか、黒のはずなのに、すっかり甘甘…?(笑;うんとキチクを書こうとすると、甘くなるのは、なんでだろー(笑;

と云うことで、第七夜へどうぞ(笑)