夜の連続高耶さん
ラチカン飼育調教劇場・第二夜


BY 椎名



見知らぬ部屋のベッドで目覚めた高耶は、まだ完全に薬の効果が抜けていないのか、虚ろな目で自分を覗き込む相手を見上げた。

「目が覚めましたか」
穏やかな声が云った。
「………」
しばらくぼんやりと相手を見上げているうちに、何があったか思い出した。咄嗟に起き上がろうとしたが、動けない。

「え……っ、」
頭を巡らすと、両手首を万歳の形でベッドヘッドに繋がれていた。動揺して手を動かそうとしても、ビクともしない。
「暴れないで……その縛り方は特殊ですからね。暴れれば暴れるほどきつくなるんですよ。じっとしていた方がいい」

にっこりと微笑んだ男の手で、かけられていたベッドカバーが外され、高耶は自分が全裸にされていることに気がついた。

「アッ……な、何……、」
男はその問いには応えず、夢見るような目で、高耶の裸体を見つめながら、
「綺麗ですよ。思った通り……いえ、それ以上に。でも、あなたはもっと綺麗になる……俺が綺麗にしてあげる。……ああ、すみません。まだ名前を云っていませんでしたね。直江、です。直江と呼んで下さい、オウギタカヤさん」

全裸の体にのしかかられて、パニックになった高耶が悲鳴をあげた。男はさも愛おしくてたまらないとでも云うように、高耶の頬を撫でながら、
「松本で1、2を争う不良少年だったと云うあなたなのに、随分と可愛い声を出すんですね。いいですよ……その怯えた目もたまらない。SEXは?……したことありますか?」

途端、真っ赤になった高耶に、男は満面の笑を浮かべた。
「……初めてですか?それはよかった。でも、一人でしたことはあるんでしょう?このぼうやを、こうして、ね……?」
真っ赤になって顔を背けた高耶の萎えたモノに、直江は徐に手を伸ばした。
「アッ!」
敏感な箇所を掴まれ、憶えのある動きで扱かれて、高耶がヒッと身を仰け反らせた。
「やっ……、そこ……、掴む、な……!」

直江はゆるゆると高耶のモノを扱きながら、まるで親が子供を諭すかのように、
「高耶さん……いつも一人でする時は、誰を想像しながらしていたの?好きなアイドル?女優?……でも、これからは、俺がしなさいと云う時以外は、一人遊びは駄目ですよ。もうあなたは……体も心も、あなたのものではなく、私のものなのですから」

にっこりと微笑んだ男に、高耶の瞳が恐怖に見開かれた。
「あっ、あん・た……オレをっ、……どうするつもり、だ……っ、」

すると男は、高耶の前を弄っていた手を奥まった秘所まで滑らせて、入り口を指先でスッとなぞった。

思わずヒッと声にならない声をあげた高耶を愛おしそうに見つめ、
「どうするって、もちろん抱くんですよ……あなたのココに俺を入れて、ひとつになるんです。ああ、こんなに怯えて……心配しないで。大事なあなたに、酷いことなどしないから。私ほどあなたを愛している者は、この世にいませんよ。毎日それはもう可愛がって、大事に、大事にしてあげる」

うっとりと囁く男に、高耶は掠れた声で云った。
「おっ、オレは男だぞ……、」
「それがどうかしましたか?私が愛したのはあなただ。性別なんか問題じゃない。それに、男もココで女性以上に悦べることを、教えてあげる。あなたはすぐに俺を手放せなくなりますよ。お気に入りの玩具のようにね」

「あ、あんた……狂ってるよ」
すると男はまたうっとりと微笑んだ。
「私が狂っているとしたら、狂わせたのはあなただ」


直江はベッドサイドのテーブルから、何かの塗り薬かと思われる丸い瓶をとりあげた。
「初めてですからね。いきなりでは痛いでしょうから、特別にあなたの為に用意したんですよ。コレを使えば、我を忘れてあなたも楽しめる。さあ、さっそく塗ってあげましょうね」

男の言葉に、その薬が何かよからぬものと悟った高耶は、身を捩ってなんとか逃れようとした。
「やめろっ……、アッ!」
直江は徐に瓶に指を突っ込むと、高耶の上に乗り上げ、抵抗を奪った上で、高耶の秘所に手を伸ばした。

「やっ、……やめ、……あ……ッ!」
薬に塗れた男の指先が、信じられない箇所の上を何度も円を描くように滑る。そして、その指がツッ──と中に侵入してきて、生まれて初めてソコに異物を飲み込まされた高耶は悲鳴をあげた。だが、すぐに体を割られた痛みよりも、薬のせいか、内壁が焼けるように熱く、むずがゆくてたまらなくなった。

「アッ……、やっ……!」
埋め込んだ指を怪しく蠢かせながら、男は高耶の耳朶に囁く。
「やっぱり狭いですね……よく馴らさないとね。最初は少しだけ痛いかもしれませんが、すぐにあなたは自分から俺を欲しがるようになりますよ」
「や・だっ……やめ、アアッ……、」
「もっと塗ってあげましょうね。遠慮しなくていいんですよ。あなたの為に用意したんですからね」

直江は一度、高耶から引き抜いた指を無造作に瓶に突っ込むと、薬に塗れたその指を再び秘所に差し込んだ。熱さとむずがゆさでたまらなかったソコに再び指が入れられ、高耶は思わず声をあげた。

「アーッ、……」
「いい声ですね。そんなに喜んでくれるなんて、わざわざ用意した甲斐がありましたよ」
男は嬉しそうに笑って、埋め込んだ指をぐるりと回し、丹念に薬を塗り込めた。

たっぷりと時間をかけて高耶の内壁を解した後、「そろそろいいようですね」と云って、徐に指を引き抜いた。
「アッ、……クッ、……、や……ッ、」
男が指を入れてかき回していた間、なんとか紛れていた熱さとかゆみが、指を引き抜かれた途端、気が狂いそうなほどの激しさで高耶を襲った。

両腕を縛られていなければ、自分の指をソコに突っ込み、内壁を擦りあげることさえ、今なら躊躇わずにしてしまうだろう。そうせずにいられないほど、塗り込められた薬の効果は激烈だった。だが自由を奪われている身では、それもできない。

腰をシーツに擦り付け、激しく首を振り、高耶は泣きながら許しを乞うた。
「アアッ……、も、やッ……、」
そんな高耶の様子を、男は熱い目で見つめながら云った。
「すぐ楽にしてあげますよ。でも、その前に誓って下さい。俺の云う通りに云えばいいんです、簡単でしょう?云えたら、楽にしてあげる」

そう云って、男が口にした言葉は、普段の高耶なら死んでも口にしないだろうと云うほど、屈辱にまみれたものだった。その言葉を聞いた途端、真っ赤になって我に帰った高耶が男をキッと睨みつけた。

だが……気が狂うほどの責め苦に喘ぐ高耶は、ついに堕ちた。
羞恥と屈辱で啜り泣きながらも、高耶の口から自分を売る誓いの言葉が紡がれた。

「オウ・ギ…タカヤ……じゅうなな……さいは、これまでの……生活と、決別し……なおえ、の……完全な・しょゆう、ぶつになり……なおえの……求めが・あるときは……いつでも……この体を……ひらくことを……誓……ます」

最後の「誓います」は、消え入りそうな微かな声だった。どんなに淫らな薬で喘がされても、それが今の高耶の限界だった。
最後まで云ったところで、涙に潤んだ瞳が、縋るように男を見た。

「も……苦し……た、すけ……、」
涙を流し、苦痛を訴え、許しを求める高耶に、狂おしいほどの愛しさが込み上げて、直江は高耶の上に体を倒し、ひどく優しく囁いた。
「もう、帰れません。いえ、帰しませんよ……わかっていますね?」

すべてを諦めてしまったのか、高耶が頷く。
「たのむ……から……、も……、」
「いい子だ……愛していますよ、高耶さん。さあ、すぐに楽にしてあげる……」




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