Decadent Eveパラレル劇場
クリスマススペシャル

presented by milkey417



生まれたら神社、結婚したら教会、死んだらお寺と節操のないこの国に、今年もクリスマスがやって来ました。

シーズンを迎え、日本サンタクロース協会(略してN.S.K/嘘v)は、休み返上、早出に残業、まるでコミケ直前の印刷屋さん(笑)のような忙しさです。
協会には、毎日、サンタ宛てに無邪気な子供達から屈託のない手紙が届きます。

『あれがほしい』
『これがほしい』

そんな子供達の願いを年に一度のクリスマスの夜、叶えてあげるのが協会のお仕事です。


高耶さんは今年、松本シティの高校を卒業して、N.S.K事務局に就職した、それはキュートな少年です。
今日も事務局に山積みになった子供達からのお手紙の整理と、そのお返事書きに追われていた高耶さんは、ファンシーでカラフルな封筒と拙い文字で書かれたお手紙の山に、何やら一通だけ、妙に達筆で宛名の書かれた真白い長形4号(笑)封筒が混ざっているのに気がつきました。

怪訝に思った高耶さんは、思わずそれを手に取ってみました。
宛先には、それは達筆で「日本サンタクロース協会御中」と書かれていて、裏返すと差出し人名に「栃木県宇都宮市××町×-×-× 直江信綱」と書かれています。

そこで高耶さんは、はたと気がつき、苦笑しました。
(なんだ、オレ、バカだな)
きっと、この人の子供があまりに小さいので、親であるこの人がかわりに手紙を出したのだろうと思ったのです。
高耶さんは封を切り、中の手紙を取り出して広げました。
するとそこには、同じ達筆で思いがけない言葉が書かれていたのでした。

「私の願いはただ一つです。N.S.K事務局で働いている仰木高耶さんがほしい」と。
手紙には御丁寧に署名までされて、『直江』と云う印鑑まで押されていました。



これを知った協会は大騒ぎになりました。サンタは夢を叶えるのが仕事であり、何より信用第一です。協会創立以来、これまで叶えられなかった願いはありません。

大人が手紙を出すこと自体反則なのですが、サンタクロースへの願いに大人も子供もありません。
まして、こうして手紙が投函されて、すでに事務局に届いてしまっている以上、この「高耶さんがほしい」と云う願いを無視すれば、日本サンタクロース協会の威信は地に落ちてしまうでしょう。

しかも差出人は協会に多額の寄付をしている、云うなればN.S.Kのタニマチ(笑)の筆頭である、直江家の人間ではありませんか。断わるわけにはいきません。

内心、高耶さんを狙っていた協会関係者達は「この手があったか」と裏でこっそり地団駄を踏みましたが、すべては後のまつりです(笑)
苦悩する協会関係者を前に、高耶さんは意を決して云いました。

「……オレ、この人の家へ……行きます」



そんなわけで、自分で自分を「プレゼント」として配達する羽目になった高耶さんの(そんなバカな;)、クリスマスの夜の様子を…いてみる?




この物語はフィクションです。
実在の直江信綱、仰木高耶両氏とは一切関係ありません。