yorurati 2005
第十一夜


presented by
黒417



男の腕に抱かれ、あれからどれだけ眠っただろうか。
次に高耶が目覚めた時は、室内は微かな空調の音以外、シンと静まり帰っていて、ベッドにも、閉ざされた部屋の何処にも、男の姿は見えなかった。

「………」
まとまった睡眠を取ったことと、若い体は回復も早いのか、精神状態は別として、あれほどの陵辱に衰弱しきっていたわりには、だいぶ楽になっているような気がする。
とはいえ長い間、手錠で戒められたままの両腕は、あちこち悲鳴を上げているし、貪られ続けている腰も重く痛んで、とても起き上がろうという気になれず、高耶は広いベッドに怠惰に身を投げ出したまま、虚ろな視線を泳がせた。



時計も窓もないこの部屋は、体内時計を麻痺させる。
その上、連日、あれだけの行為を強いられては、マトモな思考が働くはずもなく、拉致されてから何日過つのか、今日が何月何日なのか、正確な日付はもはやわからなかった。
せめて今が昼なのか夜なのか、それだけでも知りたいと思ったが、男が答えないのはわかっていたし、知ったところで何にもなりはしないと、高耶は口端を歪ませた。

あの男は、毒だ。
王に仕える従者のように、恭しい態度の裏にケダモノの本性を隠し、甘く優しい言葉と仕種で、自分を絡め取ろうとする。

いっそ狂ってしまえたら、楽になれるだろうか。
苦しいのなら、逃れたいなら、一刻も早く正気を手放して、あの男の庇護の中に、すべてを委ねてしまえばいい。
(壊れてしまえ)
自分の中で、囁く声が聞こえる。
どれほど虚勢を張ってみても、本当は自分がそれほど強くないことを、高耶は知っている。
この異常な状況が続く限り、近い将来、その日は確実にやってくる。
自分が壊れる──いつか訪れるだろう、その日を思い、高耶は一人、静かに身を震わせた。






それからまもなく、食事のトレイを手にした男が、部屋に戻ってきた。
男の姿を認め、囚われの体が一瞬、強張るが、男は気にした様子もなく、高耶が目覚めているのを知るや否や、穏やかに微笑みかけてきた。

「高耶さん──起きていたんですね。ちょうどよかった。食事の用意ができましたよ」
男はトレイをサイドテーブルに置いて、まだベッドに横たわったままだった細い体を恭しく抱き起こすと、腕の中で身を固くしている高耶の乱れた前髪を、いとおしげに整えてやった。

「お腹すいたでしょう」
微笑む男はいつものように、仕立てのよさそうな黒スーツをきつく着込んでいたが、昨夜、寄り添うように眠った男の、スーツの下に隠された素肌が、思いがけず暖かかったことを思い出して、高耶は咄嗟に紅くなった顔を背けた。

「──高耶さん?」
「………」
高耶は答えず、こちらを見ようともしない。男は苦笑すると、形のいい顎に手をかけて、そっとこちらを向かせた。
「どうかしましたか?」
「……別に。なんでもねえよ」
照れ隠しに殊更、怒ったように呟いて、高耶は素っ気なく視線を反らせる。
(なんでもないようには見えませんよ?そんなに紅い顔をしているくせに。後でたっぷり白状させてあげますよ)
幸せそうな笑を浮かべた男は、トレイからスプーンを取り上げると、いいにおいを立てているスープの皿から一口掬い、いとしい唇に持って行った。





食事が済むと、男は待っていたとでも云うように、にっこりと微笑んだ。
「昨日のあなたのお留守番の様子、あなたが眠っている間にビデオをチェックしたら、とても綺麗に撮れていましてね」

あなたにも見せてあげますよ。
楽し気なその言葉に、たちまち高耶の端正な顔から色が引いたが、男は有無をいわせず細い体を抱き上げ、軽々とソファに運んで自分の膝に座らせた。
きちんとスーツを着こなし、自信に溢れた男の膝で、両腕の自由を奪われ、全裸で抱きしめられている自分が惨めで情けない。
せめて少しでも身を隠そうと、哀れに閉じようとする膝ですら、甘い叱咤とともに、背後から回された手で、大きく左右に割られてしまう。

子供のようにむずかる愛しいひとを宥めつつ、男が手許のリモコンを操作する。
すると、たちまち数台のモニターに、内診台であられもなく喘いでいる昨夜の自分の姿が音声を伴って流れはじめたので、高耶はカッと顔を紅くしてモニターから視線を逸らせた。

「最近のカメラは本当に性能がいい。綺麗に撮れているでしょう」
男は背後から抱きしめている形のいい耳朶に唇を寄せて、満足気に囁いた。
「高耶さんは本当に、オモチャが大好きなんですね。ほら、見てご覧なさい?気持よくて、あんなに腰を振ってる」
いやらしいひとだ。
淫らに指摘されて、高耶は真赤になって喚いた。
「いう、なっ……!もう、やめろッ」
「なぜです?せっかく、こんなに綺麗に録れているのに。あなただって自分のイクところ、見たいでしょう?」
悪戯そうに囁いて、男は嫌がってもがく体を諭すように抱きしめる。
『ンンッ……クッ……』
啜り泣きながらも体内の玩具の刺激に喘ぎ、更にもっとヨクなろうと自ら腰を揺する浅ましい己の姿を、嫌でも目の前につきつけられて、高耶は淫らな自分に吐き気すら覚えた。



この部屋に設置されている隠しカメラは、どうやら一台や二台ではないらしかった。
全身が映っているものは無論のこと、顔だけを延々と捉えたものやバストショットなど、画像は多岐に渡っている。
男は、モニターの中で喘ぐ高耶を示しては、嫌がる耳朶に、この時はどんな気分だったの?気持よかったの?と、容赦なく言葉で責める。
おそらく、今、こうして全裸で男の膝に抱かれている姿も、録られているに違いない──羞恥と屈辱で、高耶は泣きそうになった。



『ンン……ン、』
不意にモニターの中の高耶の喘ぎが一際、高くなった。
『───ッ!』
枷を噛まされている顎が、声にならない声をあげると同時に大きく仰のく。
『ンンッ……、クッ……』
絶頂を迎え、切なく寄せられる眉も、その瞬間、きつく閉じた目尻を伝う涙も。
内腿がビクン、ビクンと痙攣し、ペニスに差し込まれている管にしろいものが吐き出される様までも、高性能のモニターははっきりと写し出していた。



高耶のその時の表情に見入っていた男は、腕の中で真赤になって身を震わせている愛しい耳朶に、うっとりと囁いた。
「──仰木高耶。あなたのイク顔は、何度見てもたまらない」
ゾクゾクしますよ。
「………ッ、」
屈辱のあまり唇を切れる程噛みしめて、モニターから顔を背ける高耶に、男は尚も甘く残酷な言葉を紡いだ。
「駄目ですよ。これは、あなただ。自分から眼を逸らさないで……ああ、それともイった時のことを思いだして、オモチャが恋しくなってしまったの?」
随分、淫乱なひとですね。
楽し気に笑う男に、高耶は涙の滲む眼で、きつく見返すのが精一杯だった。

「そういえば、あなたにお土産があったのを、忘れていましたよ」
わざとらしく、ソファの傍らに置き放されていた黒い大きな紙袋を取りあげ、男はクスクスと微笑んだ。
「高耶さんはオモチャが恋しくてたまらないようだから、今すぐ好きなのを入れてあげる」
男は紙袋から、まだ未開封の、眼を背けたくなるような淫らな形状の淫具を次々、取り出しては、高耶の裸の膝に、それらの箱をひとつづつ、これ見よがしに並べていった。

どれが欲しい?
揶揄るような囁きに、顔を真赤にした高耶がもがいて、膝から玩具の箱が音を立てて落ちると、
「──そう。高耶さんはこれが気に入ったんですね」
と、男はクスクス笑って、嫌がる体を膝に抱いたまま、器用に腕を伸ばして床に落ちた箱を拾い上げた。

高耶の見ている目の前で、無造作に箱が開けられる。
大小の黒い楕円形のパールローターがいくつも連なったその淫具に、手早く電池をセットすると、男は先端部分の一際大きいパールを形のいい唇へあてがった。



「舌を出して……」
おぞましいその淫具を見たくなくて、顔を背ける高耶に、男は諭すように云う。
「しっかり舐めて濡らさないと、痛いのはあなたですよ?」
それでも、頑として口を開こうとしない高耶に、男はしょうのないひとですね、と苦笑して、萎えたままの若い楔を袋ごと握り込んだ。

「ッ……!」
感じやすい箇所をきつく掴まれ、高耶はヒッと息を止める。
「そこっ、いたい……つかむなっ……」
男の手を外そうと、手錠に戒められた手を伸ばした途端、尚もきつく握り込まれた。
「アアッ……!」
「駄目ですよ。云うことを聞いて」
優しいが、容赦のない言葉に、涙を零しながらも、許されないことを悟った高耶が、おずおずと従うと、男はにっこりと微笑んだ。

「いい子ですね……」
羞恥と屈辱に震える舌に、玩具の先端が触れる。
連なっているローターの一つ一つを、散々に舐めさせられて、ようやく許されたのも束の間、高耶は男の膝の上で、横抱きで俯せにされ、まるで悪戯をした幼子が仕置きで尻を叩かれる時のような、惨めな姿勢を強いられた。



モニターの中で喘ぐ高耶の映像を眼の隅で追いながら、男は膝にいる高耶の双丘を割って、ヒクつく蕾に舌を這わせる。
「や……ッ、」
たちまち、嫌がって身を捩る体を甘く叱咤しながら、男はいつも自分を受け入れる小さな唇に口づけ、指先で幾度も円を描き、そっと力を入れて長い指を差し入れた。
体を割って侵入する異物の感触に、高耶がヒッと声をあげるのも構わず、そのまま、慎重に奥まで含ませると、細い背が撓る。
「……やめ……ッ、」
「力を抜いて」
小刻みに震えている背に愛おし気に口づけ、根元まで差し入れた指で熱い襞を掻き回し、やがて名残惜し気に指が抜かれると、変わりに先ほど高耶が舐めさせられた、唾液に濡れたパールの一つが、ヒクつく蕾に押し当てられた。

「ヒッ……!」
直径3cmほどの、先端のパールローターが体を割って侵入し、高耶が声にならない声を上げる。弾力のある襞が、生理的な反応で侵入した異物を吐き出そうとするのを男は許さず、抜けてしまわぬよう、指先で尚も深く押し込んだ。

「やっ……抜け、よっ……」
形のいい双丘から、パールが連なる様は、あまりに淫らで愛おしい。
「可愛いですよ……高耶さん。いやらしい尻尾を垂らして」
男はクスクスと微笑むと、まるで猫をあやす時のように、屈辱に震える喉を卑猥な手付きで撫でてやった。高耶は言葉もなく、ただ嫌々と首を振るしかできない。
次いで、一つ目のものより、やや小振りののパールローターが一つ、また一つと押し込まれ、血の通わない玩具に直腸を圧迫されて、高耶は苦し気に喘いだ。

「も、苦し……、」
もはやプライドも何もなく、あまりの苦しさに哀願が、たまらず口をついて出る。
「あと一つですから、頑張って」
男は力付けるように云って、最後の一つを半ば強引に沈めると、膝の上で小刻みに身を震わせている細い体をそっと抱き起こしてやった。
「アアッ……、」
その動きで、体内の淫具に敏感な粘膜を擦られ、高耶がまた新たな悲鳴をあげる。

「高耶さん……」
愛おし気に名前を呼んで、男が高耶を元通り、自分の体に寄りかからせるように座らせた時、不意にモニターから『あうえ』と云う自分の切ない喘ぎが耳に飛び込んできたので、高耶はヒッと息を止めた。



「み、見るな──!」
もがく高耶を押さえ、男はモニターに見入る。
『あうえ……あう……あうええ』
口枷のせいで、きちんとした言葉にはならないが、モニターの中の高耶はぼろぼろと泣きながら、戒められた内診台で狂ったように男の名を叫び続けていた。
「………」
男は、歓喜の驚きに鳶色の眼を見張った。
最愛のひとが、わずか一夜の間に、これほどまでにも自分を求めて泣いていたのだと思うと、愛おしさのあまり、目眩がする。
だが、腕の中にいる当の高耶は、よほどそれを見られたくなかったのだろう、屈辱に身を震わせ、真赤になった顔を背けまま、こちらを見ようともしなかった。

「高耶さん……」
そんなに、さみしかったの?
意地をはる唇から、もう一度、自分の名を呼ばせたくて、男は更なる悪戯を思い付く。
「高耶さん、実はあなたにもう一つ、お土産があるんですよ」
男は意味ありげに笑って、玩具を銜えさせたままの高耶を軽々と抱き上げた。





以外なことに、外に出られないあなたの為に、土産と称して男が手に入れてきのは、ジムなどに置かれているような業務用のトレッドミルだった。無論、それが本来の用途ではなく、新たな責め具の一つとして、男が気まぐれに買い求めてきたのは明白だった。

「お散歩に行きましょうね」
甘く残酷な言葉を吐いて、嫌がる体に無理矢理、首輪とリードをつけ、強引にステップに乗せると、無情にもトレッドミルと淫具のスイッチが入れられた。

「──ッ、」
たちまち、声にならない悲鳴があがった。
拉致されてから、行為の時ですら自由を奪われたままの体は、筋力が衰えてきているのか、足元も覚束なくなっている。
その上、奥深く淫具を飲み込まされた体でそんなものに乗せられた上、体内で連なるいくつものローターが一斉に暴れ出したのだから、たまったものではない。

僅かの間に、自分の体がこれほどまでに弱っていたことにショックを受ける余裕すらなく、ゆっくりと動き出したトレッドミルの上で、あられもない悲鳴をあげて、高耶は手錠をかけられたままの不自由な腕で、倒れまいと必死に手すり用のバーにしがみついた。
だが、その途端、体内で振動している淫具に敏感な内壁を激しく突き上げられる形になって、高耶はひいっと身を仰け反らせた。

万が一にも、高耶が怪我をしないよう、傍らに寄り添い、いとしいひとが喘ぐ姿を見つめていた男は、バランスを崩して倒れかけた体をしっかりと抱きとめた。
その動きのせいで、また、高耶が新たな悲鳴をあげる。
「なおっ……」
床に下ろされた高耶は、抱きしめられた胸の中で、男の名前を呼ぶのが精一杯だった。
プライドも何もなく、もう無理だと高耶は泣きながら訴えた。そうしている今も、体内に沈んだいくつものローターは、容赦なく暴れ続けていた。

「あなたの為に、せっかく買ってきたのに。もう降参ですか?」
揶揄るような言葉にも、きつい眼を潤ませ、ガクガクと頷く泣き顔が、たまらなく愛おしい。
男は、啜り泣く顎に手をかけると、一言、云えたら許してあげると微笑んだ。

高耶さん。昨夜、俺がいなくて淋しかったの?
「───ッ、」
新たな涙を零しながら、高耶は目を閉じ、消え入りそうな声で、云われた通りの言葉を紡いだ。

──おまえがいなくて、さみしかった、と。


To Be Continued.



今年初の夜ラチをお届けします。
ビデオ鑑賞&以外なお土産編……いかがでしたでしょうか(^-^;)
トレッドミルとは、ぶっちゃけウォーキングマシンのことです。一応、念の為(^-^;)
勿論、うちの直江はお金持ちで、高耶さんの飼育の為には金に糸目はつけないので(笑)通販で売ってるようなちゃっちいのではなく、プロ仕様(CO×BI社)のカッコイイ奴ですのv>ちなみにン百万するそうです(爆)

ってゆーか。黒のはずなのに、全体的に甘いような…(笑;
高耶さんが少しづつ堕ちかかっているせいもあるんですが、やっぱり、意識してキチクを書こうとすると、甘くなっちゃうみたいです…ははは(^-^;)
このままだと夜ラチ、milkey417に乗っ取られそうな;……ガンバレ黒417(爆)

それでは、読んで下さってありがとうございました(^-^;)