yorurati 2004
第九夜


presented by
黒417



お土産を買ってきますよ。

甘い囁きとともに、容赦なく玩具のスイッチが入れられた。
「───ッ!」
媚薬に荒れ狂う襞の中、飲み込まされているソレが振動をはじめると、たちまち声にならない悲鳴とともに、内診台に戒められた体が大きく撓った。

「ンン……クッ……」
傍らに立つ、鳶色の瞳が、喘ぐ自分を熱く見下ろしている。その視線から少しでも逃れたくて、高耶は哀れに身を捩った。

男の眼から見ても恵まれた容姿。長身でモデルのように均整の取れた体躯に、きっちりとスーツを着込み、見るからに自信溢れる男に比べ、あられもない姿で戒められ、女のように喘がされている自分が惨めで情けなくて。
男の欲望のまま、犯され、食事も排泄も何もかもをその手で施されて、まさしく「飼われている」と云う現実を、改めて突き付けられたような気がして、耐えがたい羞恥と屈辱に、背けられた瞼から、新たな涙がぼろぼろと伝った。

(畜生……ッ)
感じたくなんてないのに……玩具を飲み込んだ襞が、意思に反して淫らに収縮する。
管を施された前も、振動による刺激で、腹につくほどになってしまっている。
口枷を噛まされていてよかった、と高耶は思った。でなければ、この唇は何を口走ってしまうかわからない。

ふと、男の手が、背けた顎を掴んでこちらを向かせた。自分を捕え、支配する鳶色の瞳と涙に濡れた瞳がかちあう。
女のように喘げは喘ぐほど、この男を喜ばせるだけ……高耶は込み上げる快楽を必死に堪え、涙の滲むその瞳に、精一杯の力を込めた。どれだけこの身を貪られようと、どんな辱めを受けようと、オレは決して、おまえのものにはならない。
だが、そんなささやかな抵抗すら、男の更なる嗜虐を煽るだけだと、高耶にはわかるはずもなかった。

(また、そんな眼をして……あなたというひとは)
もう、とっくに自分のものだというのに、腕の中で堕とされまいと、あがく高耶がいとおしくてたまらない。
頭上で一纏めにされた細い手首、枷を噛んだ口端を伝う銀の雫……仰のく首筋、口づけの痕の残る大きくくぼんだ鎖骨、激しく上下する薄い胸。
細く引き締まり、子供のように処理された下腹部、その中心で勃ちあがる管を施されたペニス、玩具とプラグを同時に飲み込み、淫らに息づく蕾、左右に割られ、ベルトで固定された長い脚。
しなやかな肢体をその瞳に焼きつけながら、男は思った。
(あなたは……俺のものだ)

やがて、男は滑らかな頬に手をあて、名残惜しげに囁いた。
「いい子で待っていて下さいね」






男が部屋を出ていき、音を立てて、重い扉が閉ざされる。
そうして、密室には高耶一人が残された。
(……ッ)
男が出ていったことで、一瞬、緊張の糸が途切れてしまったのか、細い体から力が抜けたが、それは、これからはじまる地獄のような長い時間の幕開けだった。

シンと静まり返った室内に響くのは、微かな空調のシューという音と、枷を噛まされた唇から零れる声にならない喘ぎ、そして、体内から洩れる淫らなモーター音だけ。
嫌でも視界に入ってしまう、壁一面に張られた鏡に映る、あられもなく拘束された自分の姿……耐えられず、高耶は無駄と知りつつ、頭上で戒められている両腕の手錠を外そうと試みた。
だが無論、ステンレス製のそれはビクともしない。
ひっきりなしに込み上げる快楽を必死に堪え、一人になってはじめて、子供のように幼い涙が、滑らかな頬を伝う。
涙は、やがて、声にならない嗚咽へと変わった。
「ヒッ……クッ……」

今更、逃げられるとは思ってはいない。
あの男がそれを許すはずがないし、例え、この部屋から抜け出せたとしても、直江は自分を取り戻す為なら、手段を選ばないだろう。
男の自分への異常なほどの執着を、嫌と云うほどその身に思い知らされている高耶には、万が一にも家族(妹)に危険が及ぶような真似だけは絶対にできなかった。
逃げることは、諦めている。
ただ、一人で、泣きたかった。

だが、そんな切ない望みさえ、あの男は許さず、自由を奪い、密かに媚薬を仕込み、強引に玩具を飲み込ませ……敏感な鈴口に管を差し入れ、何も考えられないような極限状態に追いやって、無残に置き去りにした。

あなたが淋しくないように。
こうするのは、すべてあなたの為と囁いて。


啜り泣く体の奥で、不意に玩具の動きが激しくなった。涙に濡れた瞳が驚きに見開かれる。何が起こったのかもわからず、あまりの刺激に激しく背を撓らせた時、男の先ほどの言葉が蘇った。
(小振りだけれど、タイマー式で性能もいいようですから、俺がいなくても、きっと朝まで楽しめますよ)
「ウウッ……ン……ア……ッ、」
激しく体内から前立腺を刺激されて、高耶は肩で激しく息をしながら、あられもなく身を捩る。左右に大きく割られた、男の口づけの痕がくっきりと残る内腿が、込み上げる快楽を堪えるようにピクピクと震えている。
やがて、管を飲み込まされている鈴口から、染み出した透明な蜜は、幹を伝い、ハーネスの食い込む蟻の門渡りを伝い、プラグの覗く蕾までをも濡らした。

「ンン……ッ……ふっ……ク、」
この日は、既に出ないと泣きを入れるほど、男の手と唇で、散々に抜かれたはずなのに……密かに使われた媚薬と、玩具によって追い上げられた若い体の、吐き出したいと云う欲求は、もはや押さえようがなかった。

「ンンッ……ン、……アッ……」
細い腰が、無意識のうちにおずおずと動きはじめている。その動きに合わせて、誰にも触れられることなく、透明な蜜に濡れ、切なく揺れるペニス。
思いきりソレを握り込み、扱いてしまいたい。
もどかしさに耐えきれず、高耶は再び、泣きながら手錠を外そうと両腕を揺すったが、やはり、ガチャガチャと虚しく鎖が音を立てるだけで、戒めが解かれることはなかった。

「ひっ……ク……、」
呼吸がおかしい。眼が霞む。体が──溶けてしまいそうに熱い。
そして、もはや堪えようのない射精への渇望。

限界まで追いつめられた高耶は、恥もプライドもなく、体内の玩具の動きに合わせて、まるで男を受け入れさせられているあの時のように、拘束された体で、唯一、自由になる腰を泣きながら揺すりはじめた。
意識して、自ら腰を振ると、たちまち、玩具を銜えた箇所からたまらない刺激が走る。
吐き出したいという思いと、淫らな自分への激しい嫌悪に、新たな涙が頬を伝うが、どれほど抗っても抗いようのない本能的な欲求の前に、仰木高耶は遂に堕ちた。

啜り泣きとともに、激しく揺れていた体に、焦がれたあの瞬間が訪れた。
「───ッ!」
声にならない悲鳴とともに、細い顎がグッと突き上げられる。
そして、体内で暴れる玩具を包む襞がきゅうっと締まると同時に、すぐに射精がはじまった。
「ンン……ッ、クッ……!」
玩具とプラグを銜えた襞が断続的に痙攣し、それに合わせて鈴口に差し込まれた管から、しろいものが吐き出され、薄いレモン色の液体の詰まった、ビニールバッグに落ちていく。
すべてを出しきっても、玩具を銜えた襞の痙攣はすぐには止まらず、声にならない喘ぎが静まり返った室内に切なく響いた。

やがて、がっくりと力尽きた細い体が内診台へ沈んだ。
激しく胸を喘がせながら、そうして高耶が前後で果ててしまっても、体内の玩具は変わらず、淫らな振動を続け、細い体を苛み続ける。
「ン……クッ……」
何より、知らずに媚薬を使われた体の疼きは一度果てたぐらいでは到底収まらず、自分の体のあまりの淫らさに、高耶は子供のように肩を震わせ、声にならない声を上げて泣き続けた。

(だれ、か……)
決して、差しのべられることのない救いを求め、見開かれた瞳に映るのは、涙に滲む、あられもない自分の姿。
泣き腫らした目元から、また新たな涙が伝い落ちた。






+++





東京、ウォーターフロント。
再開発の進むこの地区で、一際、眼を引く高層ホテルの上階の一室に、男が戻ってきた。
ジャケットを脱ぎ、ネクタイをくつろげ、冷蔵庫から取り出した氷をグラスに放り込み、ミニバーのボトルを開けたところで、静寂を破るように携帯が鳴る。
長兄からだ。
『遅くにすまないな。……もう、休んでいたか?』
「いえ。たった今、戻ってきたところです。無事に終わりました」
男の言葉に、長兄はホッとしたように、
『そうか。お前のことだから、うまくやってくれるとは思っていたが、すまなかったな』
ちょうど、ひとまわりも歳の違う長兄は、弟の労をねぎらった。
「いえ。かまいませんよ。これも仕事ですからね」
そう云って、男は微笑む。

男の長兄が経営する不動産会社は、その巧みな経営手腕と豊富な財力に加え、地元、宇都宮での人脈を武器に、着々と業績を伸ばし、数年前、遂に東京進出を果たした。
その後も経営は順調で、現在は宇都宮支社を男が引き受け、長兄は東京本社で多忙な日々を送っている。
この日、男は、本来、長兄が出席するはずだったとある取引先のパーティに、社長代理として借り出されていたのだった。

『ところで……彼女、どうだった?美人だっただろう』
長兄は意味ありげに切り出した。
兄のいわんとする相手が、この日のパーティのホストである、取引先の社長直々に紹介された令嬢のことだとはすぐにわかったが、男はいかにも気のない素振りで、やんわりと答えた。
「ええ。とても綺麗な方でしたよ」
ようは、まったく眼中にないと云うことだ。
不幸な生い立ちをしたからこそ、できれば、一日も早くこの弟に家庭を持ち、幸せになってほしいと願う兄は、弟の、そのあまりのそっけない返答に電話口で苦笑した。
『……まあ、いい。それより、来週、久しぶりにそっちに行けそうだ。仙台の、例の再開発の件もあるし、その時、メシでも食いながらゆっくり話そう』
「……わかりました。おやすみなさい」

通話を切った男は、左腕のロレックスに眼をやった。
深夜一時をまわっている。
男は、出かけに見た、最愛のひとの姿を思い浮かべた。
(高耶さん……)
あのひとは、今ごろ、どうしているだろう。

ふと、ベッド脇の椅子に置き放しにしていた紙袋が目に付いた。中には、この日、新たに買い求めた、高耶が喜びそうな玩具やハーネスなどが入っている。
他にも、高耶の体調維持用に、幾つか土産を買ったのだが、それらは明日以降、直接、屋敷へ配送されることになっていた。
今日、飲ませた玩具は、一時間おきに十五分づつ稼動するようにセットしてきたが、あのひとは楽しんでくれているだろうか?
淋しくて泣いてはいないだろうか?
スラックスの下、いつしか熱くなっている自分に気付き、男は自嘲したように笑った。
(高耶さん……)
明日の朝、戻ったら、すぐに抱いてあげますよ。






+++





しばらく沈黙していた玩具が、仰木高耶の体内で、何度目かの息を吹き返した。
内診台に身を預け、半ば、意識を飛ばしかけていた体が、その途端、ビクッと震え、無残な現実へと引き戻される。
「ウウ……ッ、ク……」
口枷を噛まされた唇から、零れる絶望の喘ぎ。
(も……たすけ……)

男が云っていたように、体内の玩具はタイマーをセットされているらしく、指定された時間ごとにスイッチが入ったり、切れたりするらしかった。

高耶はあれから二度、射精していた。
一度は、あと少しで出る、と云うところで玩具のスイッチが切れてしまい、泣きながら、沈黙した玩具を銜えた腰を必死で振って、ようやく果てた。

時が経ち、媚薬の効果が薄れてきたせいか、いつしか玩具とプラグを埋め込まれている箇所がじんじんと疼いて、其処に何かを銜えさせられているのが、つらくなってきている。
もはや出すものもないはずなのに、ペニスに通された管も、しきりと排尿を刺激し続け、形容しがたい苦痛に、もう、限界だと思った。
だが、それでも命を持たない玩具は、容赦なく高耶を苛み続ける。
最初より、振動が弱く感じられるのは、電池が消耗してきたせいだろうが、玩具が完全に沈黙するまでは、まだまだ時間がかかるだろう。

(死んじまう……)
朝になったら戻ってくると男は告げたが、この部屋には時計も窓もない為、男が出ていってから、どれほどの時間が過ぎ、あとどのぐらいで許されるのか、高耶にはまったくわからない。
それどころか、もし、男が戻ってこなかったら、自分は永久にこのままなのではないかと、恐ろしい考えすら浮かんできて、パニックにかられて、再び、戒められた両腕を激しく揺するが、やはり手錠はビクともしなかった。
長時間の拘束で、痺れきった両腕は、もはや動かすこともままならない。
泣き腫らした目元から、新たな涙が頬を伝った。

「あう……え……」
口枷を噛まされている為、まともな言葉にはならなかったが、この日、放置されて、はじめて高耶は、泣きながら男の名を呼んだ。
あの男こそが自分を攫い、閉じ込め、こんな目にあわせている張本人なのに……この状況から自分を救ってくれるのも、あの男しかいない。

果てのない責めに、極限まで追いつめられた精神の細い糸がふっつりと切れ、てのひらに掬い上げた砂が、さらさらと落ちていくように。
緩やかに……だが、確実に、仰木高耶が壊れていく。

直江。

一度、その名を口に出してしまうと、もはや箍が外れてしまったように、幼い子供が親を求めて泣くように、高耶は男の名を繰り返した。
「……えっ、……あう……」
涙腺が壊れてしまったように、ぼろぼろと、涙が零れて止まらなくなった。
苦しい。
早く……。
切なく喘ぎ、啜り泣きながら、高耶は一刻も早く時が過ぎ、男がこの部屋に戻るその時をひたすら待った。






+++





高耶にとって、永遠とも思える長い一夜がようやく明けた。
午前七時三十分。
人々が新たな一日を迎える為に動きはじめた頃、ようやく屋敷へと戻った男は、わき目もふらずに高耶を閉じ込めている、あの部屋へと向った。
ドアを開ける僅かな時間すらもどかしく、いとしいひとの名を呼びながら、内診台へと向かう。
照明の落された密室で、高耶は戒められた体をぐったりとシートに預けて、完全に意識を無くしていた。

(高耶さん……)
わずか一夜の留守番が、よほど応えたのだろうか、昨夜、出かけにきつく見返してきた同じ彼とは思えないほど、その寝顔は頼りなく、幼く見える。おそらく、散々、泣き明かした果てに力尽きてしまったのだろう。
まだ涙の渇かぬ頬に、そっと手をあて、名前を呼んでやると、濡れた瞼がうっすらと開いた。

「高耶さん。ただいま帰りました。……いい子にしていましたか?お土産を買ってきましたよ」
声をかけるが、まだ意識が朦朧としているらしく、開かれた瞳は虚ろで、反応がない。
「高耶さん……?」
もう一度、その名を呼んで、そっと頬をはたいてやる。
すると、ようやく男の帰宅に気付いたのか、大きく見開かれた瞳に、見る間に新たな涙が込みあげ、枷を噛まされた唇から、声にならない声が洩れた。

「あう……え……っ、」
「泣かないで。……そんなに、淋しかったの?」
その言葉に、真赤に泣き腫らした目元から、また新たな涙が溢れて頬を伝う。
男は、むずかる子供を宥める親のように、溢れる涙を唇で拭い、汗でべっとりと張り付いてしまっている前髪を長い指でかきあげてやりながら、いとおしげに囁いた。
「高耶さん……」
「ウウ…ッ……ウッ、」
声にならない声で、必死に何かを訴える高耶に、男は「いま、楽にしてあげるから」と囁いて、頭の後ろに手を回し、口枷の止め具を外してやった。
「ヒッ……クッ……、」
ようやく、口枷を解かれた高耶は、すっかり渇いてしまった唇を大きく開けて、苦しげに喘いでいる。その様子を見て取った男は、ミネラルウォーターのボトルの封を切ると自ら口に含み、いとしいひとに口移しで飲ませた。

「ンッ……」
抗う力もなく、高耶は口づけを受け入れたが、一晩もの間、枷によって封じられていた唇は、痺れきっていて、上手く飲み込むことができない。
「……ゆっくり」
男は囁いて、もう一度、水を口に含んで、口づけた。
「……ッ、」
ごくり、と白い喉が動く。今度は、うまく嚥下できた。
口移しで注がれた水が、乾ききっていた体に染み入るように浸透していく。
何度か、同じ動作を繰り返して水を飲ませてやり、高耶が落ちついたと思われるところで、男はボトルを置くと、改めていとしいひとの名を呼んだ。

「高耶さん……」
「……ッ、」
しばらくの間、しゃくりあげ、大きく肩で息をしていた高耶だったが、冷たい水に体を癒され、男の熱い視線に晒されるうちに、ようやく彼、本来の自我が戻ってきたのだろう。
込み上げる羞恥に耐えられなくなったのか、高耶は男の視線から逃れるように、涙に濡れた顔を背けた。

ぐったりとシートに沈み、啜り泣く薄い胸が、誘うように上下している。
「高耶さん……」
男は、覆い被さるように上体を倒すと、頭上で一纏めにされている両手指に己の指を絡め、もう片手で背けた顎を掴んでこちらを向かせ、再び、その唇に唇を重ねた。
「ンン……ッ、」
ついばむような優しいそれは、すぐに熱を帯びて、明かに欲望を煽るような淫らなものへ変わっていく。男の唇は首筋から鎖骨を滑って、胸の突起へと降りていった。
片方を指で揉み込まれ、もう片方を唇できつく吸い上げられて、高耶は声をあげて嫌々と身を捩る。
甘い胸の尖りを散々貪って、ようやく顔をあげた男は、頭上の手指に己の手指を絡めたまま、片手で顎を押さえてこちらを向かせ、熱く囁いた。


「高耶さん……昨日、あなたの中にあげたオモチャは、どうでしたか?」
途端、カッと紅くなり、視線を逸らせる高耶がいとおしい。
男は、ドクタースツールを引き寄せていとしいひとの正面に腰を下ろすと、羞恥をより煽るかのように、淫具を積んだワゴンからペンライトを取り上げ、しっとりと汗ばむ内腿に顔を寄せて覗き込んだ。

「み、……るな……ッ、」
いまの高耶には、掠れた小声でそれだけ云うのが精一杯だったが、それで無論、許されるはずもない。
ペンライトに照らし出された其処は、管を含んだペニスも、秘所に差し込まれたままのプラグも、股間に食い込むハーネスも、一夜の狂乱で零し続けた淫らな蜜に濡れそぼっている。
男はクスッと微笑んで、
「どうやら、楽しめたようですね。ココもココも、こんなにぐしょぐしょにして……」
揶揄るような言葉とともに、敏感な箇所を指先でツーッと撫であげられて、細い体がビクンと撓った。
「やめ……っ、」
ふと、思い立った男が、鈴口に沈む管を指で摘んでそっと揺すってやると、たちまち掠れた悲鳴が響く。

「や、だ……もっ……なお…ッ、」
もはやプライドも何もなく、溢れる涙を隠しもせずに、高耶は哀願した。
「も……やめ……ゆる、し……」
「……コレ……取ってほしい?」
いとしいひとの媚態に、自らも限界だった男は、管や股間に食い込むハーネスを示して囁いた。わかりきった問にも、高耶は泣きながら、子供のようにコクコクと頷く。
見れば、若い楔と管で繋がったビニールバッグは、僅かに濁った薄いレモン色の体液でいっぱいになってしまっている。

「……今、取ってあげるから」
じっとして……男は囁いて、萎えた幹に貼られているサージカルテープをそっと剥がし、若い楔の奥深くまで沈んだ管を、慎重に引き抜きにかかった。
「ー……ッ!」
男の体で、最も敏感な器官を蹂躪しながら、ゆっくりと出ていく管。
声にならない悲鳴とともに、戒められた体がビクンと跳ね、完全に管が抜けたと同時に、本人の意志とは関係なく、萎えたままの鈴口から透明な体液が溢れ出た。

「アー……ッ、」
か細い、絶望の悲鳴が密室に響く。
それまでにも、幾度となく、強制的な排泄を強いられてはきたけれど。
こうして男の目前で、半ば無意識のうちに、はしたなく漏らしてしまった高耶が受けたダメージは、本来、プライドが高いだけに、相当なものだった。


「ヒッ……ク……う……」
「高耶さん……泣かないで。大丈夫だから」
大きく胸を喘がせて、子供のようにしゃくりあげているいとしいひとを宥めつつ、男は甲斐甲斐しく、濡れてしまった箇所を、熱めの湯できつく搾ったタオルで清めてやる。
次に、男は細い腰と股間を繋ぐ皮のハーネスに手をかけた。
留め具が外され、敏感な箇所に食い込んでいたハーネスが取り除かれ、更に、蕾に沈むプラグに男が指をかけると、高耶が再び、か細い悲鳴を上げた。

「高耶さん……ココの力を抜いて」
囁きとともに、長時間、敏感な襞を犯し続けていたプラグが、ずるりと引き抜かれる。
ひいっと云う、掠れた悲鳴とともに、細い体がシートに沈むが、これでもまだ長い責めは終わらなかった。
体内には、まだ、一晩中、高耶を苛み続けたあの玩具が残っている。

「高耶さん。中のオモチャ、取ってあげるから、じっとしていて下さいね」
男は諭すように云って、含むものを失って、まだヒクつく蕾に二本の指を潜り込ませた。
「ひいっ……やっ……ア……ッ、」
男は、高耶が泣き声をあげるのも構わず、慎重に中を探ったが、玩具は一晩、もがくうちに、奥へと入り込んでしまったらしく、微かに指先には触れるものの、とても取り出せそうになかった。

男はわざとらしくため息をつくと、徐に指を引き抜いて、
「高耶さんはよほど、このオモチャが気に入ったんですね。奥まで入ってしまって、俺の指では取ってあげられないようだから……お腹に力を入れて、中のオモチャ、自分で出して御覧なさい?」
ココで見ていてあげるから。

「やっ……だ……そん、な……ッ、」
排泄を強要されるのと同じ、残酷な言葉に、高耶は泣き腫らした眼を見開いて、嫌々と首を振った。
男は宥めるように、
「仕方ないでしょう?俺の指の届かないところまで飲み込んでしまったのはあなたなんですから」
「ウウ……うっ……」
甘く残酷な囁きは尚も続いた。
「あなたが、どうしても自分で出せないと云うのなら、今すぐココに、また、あの大きな注射器でお湯を入れて、出させてあげても構いませんよ。どっちでも好きな方を選ばせてあげる」
そして、男は揶揄るように付け加えた。
あなただって、ずっとココに、電池の切れたオモチャを銜えていたくはないでしょう?


「ヒッ……く」
高耶はしばらくの間、シートに身を預けて啜り泣いていたが、やがて、観念したのか、男の視線から逃れるように、きつく眼を閉じたまま、おずおずと、細く引き締まった下腹部に力を入れた。
固く閉じた蕾がゆっくりと開いて、襞を割るようにしてピンク色の玩具が顔を覗かせる。
「見えてきましたよ……そのまま、力を入れて御覧なさい?」
男が熱い眼で凝視する中、高耶の泣き声が一際、大きくなる。
やがて、ぱっくりと開いた襞から卵型のそれが勢いよく押し出され、股間部分にせり出しているステンレスのトレイに、ゴトッと音を立てて落ちた。

「ひっ……う……」
自力で玩具を吐き出させられた蕾は、含むものを失い、切なげに息づいている。
「高耶さん……」
長すぎた夜の果て、限界を超えた責めと羞恥に、泣き腫らした瞳を宙に泳がせ、完全に力尽きてしまったいとしいひとを前に、男は荒荒しくスラックスの前をくつろげ、猛る欲望を取り出すと、もはや抗う力もない細い体にその切っ先を押し当てて、強引に押し入った。

「ヒ───ッ!」
容赦なく打ち込まれる所有の証。
囚われの体の喉奥から、掠れた悲鳴が押し出された。

「高耶さん……」
熱い襞に深深と身を沈めた男の唇から、満足げな吐息が漏れる。体の下で、半ば意識を飛ばしかけている耳朶に男は熱く囁いた。
「いい子でお留守番できたご褒美をあげますよ……」



To Be Continued.



ぜーぜー(>_<;>息が切れてる;
やっと直江のご褒美(爆)が入ったところで力尽きてしまいました(爆;
すみませんι

突然、来臨したえろ神様のおかげで、思いがけず第九夜に取りかかれたのはいいものの、途中でお帰りになってしまいまして(放置ぷれい?)残りは根性で書きました(爆;
我ながら、根性の使い方が激しく間違ってるような(-_-;)

直江、ホテルで、置き去りにしてきた高耶さんを思って、ハアハアしてましたが(爆)あのあと、抜いてたりしたらいやですの;
高耶さんのG(死語/笑)はもー想像しただけでじたばたしちゃいますがvvv(爛れ

お留守番高耶さんソロライブは、不定期更新にも関わらず(いや、もう、ホントに…;)呆れず、読んで下さっている奇特な皆様に捧げさせて頂きます(^-^;)

第十夜は、この続きからです(続くな;)お土産もまだですし(笑) 何を買ってきたかは、今後のお楽しみということで……続き……頑張ります。
また、書けたら読んでやって下さいませ。
それでは、読んで下さってありがとうございましたの(>_<)