クリスマス・イヴ。
「ふう…さみ……」
夕暮れの城址公園は、この日の為に着飾った若者達で溢れている。
高耶はベンチに腰かけ、冷えきった両手を擦り合わせた。
出かけに手袋が見つからず、探していたら間に合わないと、そのまま家を出てきたのだ。待ち合わせの時刻を五分過ぎても、高耶の待ち人は現れない。
そんな素振りをおくびにも出さずとも、人一倍、寂しがりの高耶を、決して待たせる相手ではないのに。(……おせーな……)
一人、また一人。人待ち顔の若者達は、次々と現れるそれぞれの相手の腕に腕を絡ませ、夜の街へ消えて行く。
やがて、高耶一人が残された。(あのヤロー……)
ほんの数分、待たされただけでも、こんなにも恐れるほど、自分を弱くした男に、怨みつらみが募る。
それとも、何かあったのだろうか?押し寄せる不安と孤独。
やがて、頬に冷たいものが触れた。──雪。
この地に生まれ育った高耶には、雪は決してめずらしいものではなかったが、一人で来ない相手を待つ身には、それはあまりに冷たすぎた。
(早く来いよ、直江……)
次の瞬間、高耶は背後から暖かい腕に包まれ、その視界は真赤に染まっていた。
「──!」
ベンチの背後から、差し出された深紅の薔薇の花束──次いで、振ってくる甘い言葉。
「すみません、道が混んでいて……遅くなってしまいました」
「………ッ、」
途端、感じるこれほどの安堵。
それを悟られたくなくて、高耶は拗ねたように振り帰って男を見ようともしない。直江の手が、背後から高耶の手を取った。
「こんなに冷えきって……私のせい、ですね」
恭しく口づけられる手。
「高耶さん……高耶さん?怒っているの?」
すみませんでした……真摯な囁きとともに、背後からきつく抱きしめられて、高耶の口から言葉が洩れた。「………からな……」
「何、ですか?」
高耶が不貞腐れたような声で云った。
「今夜は一晩中つきあわせてやる。うんとうまいものねだってやるからな。てめーの財布がパンクしたって知らねえぞ。覚悟しろ」
「──御意」
直江はクスクスと笑い、高耶の前に回ると、改めてその手を取った。
立ち上がった高耶の顔は、まだ拗ねたままだったけれど。並んで歩きはじめた男の腕が、高耶の腰に回される。
男は最愛の頬に口づけた。「──高耶さん、愛していますよ…」
Merry Christmas.
今年も1年(まだ終わってないけどι)当サイトに遊びにいらして下さってありがとうございました(^-^)
皆様、よいクリスマス&お正月をお過ごし下さいませv2002.12. by milky417