「TOY DOLL 2」




Presented by 黒417




夜までまだ時間があるが、土曜ということもあってか、男が選んだホテルのロビーはすでに数組のカップルで賑わっていた。

今時の若いカップルにとって、行為のみが目的の、この場所を訪れることなど、何でもないことなのだろう。ソファでむつまじくチェックインを待つ様は、後ろめたさの欠片も感じられない。
だが、寄りそうように入ってきた黒ずくめの男と青年の、どちらも端正でかなり眼を引く同性同士のカップルには、さすがの彼らも驚きを隠せなかったようで、皆、一瞬、あっけにとられたように見入った後、互いのパートナーをつつきあい、チラチラとこちらを見ながら、何事か囁きあった。



高耶は体内の玩具の振動に耐えつつ、痛いほど投げかけられる好奇の視線から逃れるように、男の影へ隠れようとしたが、男はわざとカップル達と向き合うような形で、空いたソファへと高耶を誘い、腰掛けるよう強要する。
玩具を銜えたまま、腰を下ろせばどうなるか、わかりすぎるほどわかっている高耶は、必死に首を振って許しを乞うたが、それで許されるはずもなく、男はさりげなくいとしい肩に腕を回して、強引に坐らせた。

「……ッ!」
声にならない悲鳴が、口をついて出てしまった。
小声だったが、それでもその悲鳴は、その場の注目を集めるにはあまりに充分すぎた。
羞恥のあまり、顔を背ける高耶の耳朶に、男が淫らに囁く。
「……俺以外の他人にそんな声を聞かせて……そんなに見られたいんですか」
「……ッ」



一組、また一組と、チェックインを済ませたカップル達がエレベータへと消えていく。
地獄のような待ち時間が過ぎ、ようやく自分達のチェックインの番が回って来る頃には、もはや高耶は男に支えられなければ、歩くどころかソファから立ちあがることすらままならなくなっていた。
「しっかりして……もうすぐですからね」
優しいその言葉とは裏腹に、これから高耶を待っているのは、淫らな部屋で繰り広げられるだろう、長すぎる仕置きの一夜。



このホテルのオーナーらしい中年の男は、日頃、同性同士のカップルなど見慣れているのか、男が高耶を伴ってフロントを訪れても特に驚いた素振りは見せず、営業用の笑を浮かべて、淡々と云った。
「いらっしゃいませ。……本日はご休憩ですか?ご宿泊ですか?」
「……宿泊で」
「かしこまりました。お部屋の方は、いかがいたしましょうか」
すると男は、体を苛む責めと羞恥から、顔を隠すようにして傍らで小さくなっている高耶に、わざとらしくどの部屋がいいか問いかけてきた。

こうしたホテルのルールは単純明快である。
壁に張られた全室の内装写真に、ライトがついていれば空室、消えている部屋は使用中。客は空室の中から、好みの部屋を選んでチェックインする。

この日は、すでに三分の一ほどの部屋が埋まっていたものの、男が先ほど指摘したSM専用の部屋は、通常よりルームチャージが高いせいか、どの部屋も空いていた。
診察室風、和風、牢獄風……淫らな装飾の施された内装写真を前に、男は揶揄るように微笑む。
「よかったですね、高耶さん。あなたの好きそうなお部屋が、ちょうど空いていますよ。どのお部屋がいいか、云って御覧なさい?」

オーナーが目の前にいるにも関わらず、男はわざと聞こえよがしに、いとしいひとを言葉で嬲る。高耶は真赤になった顔を隠すようにして、ただ首を振るしかできなかった。
「答えられないんですか?仕方ありませんね……それじゃ、あなたを躾なおすのによさそうだから、この部屋にしましょうか」
口調はいつもと変わらず穏やかだが、牢獄をイメージした、禍禍しい装飾の施された部屋を、楽しげに指差す男の言葉には、まるで容赦がなかった。

「……601号室ですね。かしこまりました」
男が前金で金を払うと、オーナーは釣と同時に、鍵を差し出しながら微笑んだ。
「備品等は各お部屋に備え付けてありますが、何かご用がございましたら、フロントまでお気軽にお申し出下さい」
……ごゆっくり。
最後にそう告げた時だけ、オーナーの言葉は妙にいやらしく感じられた。




鍵を受け取ると、男は高耶に歩くよう促した。
男の腕に支えられ、エレベータに向かう際も、後から入ってきた新たなカップルの好奇の視線を感じて、いたたまれなくなる。
もつれる脚を叱咤し、肩を抱かれるようにして、ようやくエレベータに乗り込み、ドアが閉まると同時に、それまで必死に堪えていた糸が切れてしまったのか、高耶の形のいい唇から、声にならない喘ぎが洩れた。

「どうしたんです、そんな声を出して……待ちきれないんですか?」
違う、と云いたいのに、言葉にならない。
「こんなに震えて……」
いとしい体の震えをその手で感じて、男がふと、目元を和らげ、こめかみに口づけた時、ゆっくりと上昇していたエレベータが6階についた。

愛しているからこそ、この体に。改めて、あなたに教えてあげる。
おいたをした代償を。
どれだけ……俺が、あなただけかと云うことを。





『6』と表示された通路は薄暗く、等間隔に設置されているキャンドルをあしらった安っぽい照明が、より淫靡なムードを漂わせていた。
エレベーターホールにさりげなく設置されている、色褪せたローターの自販機も、ここが普通のホテルでないことを嫌でも物語る。

「こっちですよ……ほら、しっかり歩いて」
支えられるというよりは、引きずられるようにして通路を進むうちに、並んだドアの一室から、あられもない若い女の悲鳴が耳に飛び込んできて、カッと赤くなった高耶の耳元に、男はすかさず囁いた。

「……女を知らないあなたには、刺激が強すぎるかもしれませんね。でも、俺を銜える時のあなたの喘ぎは、今の女の声なんて比べ物になりませんよ?男のくせに」

嫌々と首を振る高耶を伴い、通路を奥へと進んで、ようやく601号室と書かれた扉に辿りつく。
男が鍵を開け、薄暗い室内へ押し込まれた瞬間、高耶はへなへなとその場に崩折れてしまった。
「……クッ……、」
自分で自分の唇を押さえていなければ、今にもおかしな言葉を口走ってしまいそうなほど、呼吸が乱れ、体の震えと熱さは押さえようもない。

背後でドアがロックされるや否や、乱暴に抱き起こされ、その動きのせいで玩具を銜えたままの箇所から、また新たな刺激に襲われ、声にならない悲鳴が洩れる。
容赦なく部屋の中央まで引き摺られ、改めて牢獄を模した室内の、あまりの異様さに息を飲む間もなく、すぐに男は当然の権利とばかりに、高耶のシャツを脱がしにかかった。

「なおっ……」
男の名を呼ぶ声が掠れる。だが、男は、鳶色の瞳を細めて、冷たく云い放った。
「そんな声を出しても無駄ですよ」
こういう時の男は、徹底して容赦がない。
荒荒しくシャツを剥がれ、天井の梁から降りている枷で、両腕を戒められる。
男は細い腕を吊るして、膝立ち状態にさせると、ジーンズのジッパーに手をかけ、膝まで引きずりおろした。

「……ッ、」
高耶は真赤になった顔を逸らせ、唇を噛み締めた。
先ほど、耐えられずに雑踏の中で放ってしまった為に、身につけているボクサーブリーフの前は、しっとりと濡れてしまっている。
淫らな体液に濡れた布地は、媚薬と玩具に刺激され続け、意志とは関係なく再び勃ちあがってしまっている若いペニスの形を、よりくっきりと映し出していた。

「大勢の人が見ている前でイってしまったくせに、また、坊やをこんなにして。本当に、あなたほどの淫乱は見たことがありませんよ」
長い指先が、濡れた下着の上から、若いペニスを容赦なく嬲る。
「やっ……」
敏感な箇所を布越しに擦られ、思わず引けてしまった腰の動きが、玩具を銜えたままの尻をより刺激する羽目になって、高耶はひいっと悲鳴をあげた。

「……べとべとして気持ち悪いでしょう。脱がせてあげる」
男は揶揄るように笑うと、有無をいわせず濡れた下着に手をかけてジーンズと同じく膝上まで引きずり下ろした。
すべてを脱がされるより、恥かしい格好にされて、高耶は羞恥のあまり身を捩る。啜り泣く横顔に、男は冷ややかに告げた。

「仲間とのキャンプは、よほど楽しかったようですね。俺の眼を盗んで、俺以外の男に、あんな写真を撮らせて……」
引き締まった下腹部から、男にしては薄い体毛をかすめた指が、前触れなく若い楔を握り込む。無造作に急所を掴まれ、たちまち高耶はヒッと息を詰まらせた。
「やっ……痛、い……」
「高耶さん。キャンプでは、誰と、いったい何人と寝たの?テントの中で?あの写真を撮った男と?」
容赦なく問い詰める男に、高耶は泣きながら首を振る。

あの日、断わり切れずに訪れた渓谷沿いのキャンプ地で、確かに人目のない場所を見計らって、シャワー代わりに水浴びをしたが、まさか写真を撮られているなんて思いも寄らなかったし、ごく普通に仲間達と渓流釣りやバーベキューを楽しみ、キャンプファイアーを囲み、夜はテントに数人づつ分かれ、各自、寝袋にくるまって寝た。──それだけだ。
だが、この男に、そんな理屈など通らないことも、高耶は嫌というほどその身に思い知らされている。
(……武藤……どうして……)

不意に、ペニスを掴む手に力が込められた。
「ヒ……!」
急所を襲う激痛に、悲鳴をあげて撓る体に、冷ややかな声が投げかけられる。
「……何を考えているんです。俺の目の前で。あの写真を撮った男とのセックスでも思い出しましたか?」
「ちが……ンン……ッ!」
云いかけた唇を、荒荒しく奪われた。
後頭部を後ろから押さえ込まれ、無理矢理、差し入れた舌で口腔を蹂躪される。
長すぎる口づけの果てに、舌と舌が唾液の糸を引いてようやく離れた時、高耶は苦しげに喘ぎながら、必死に声を振り絞った。

「……なお……も……ゆる、し……」
男は鳶色の瞳をスッと細め、うっとりと囁いた。
「勿論、許してあげますよ……このお仕置きが済んだらね。高耶さん……もう一度、この体が誰のものか、時間をかけて、たっぷりと教えてあげる」
そうして、男は、高耶の下腹部を淫らにまさぐった。
「二度とおいたができないように、まずはここを綺麗にしましょうか。ここが子供のようだったら、恥かしくて人前で裸になんてなれないでしょう?」
「や……」
男は嫌がる高耶に、尚も容赦なく告げた。

「首輪がいいですか?それとも、ピアス、刺青……なんだってしてあげる。この体に刻んであげる。いつ、何処にいても、あなたが俺の所有物だと一目でわかるように」



To Be Continued.



こんにちは、黒417です。チェックイン編です(^-^;)
中途半端でごめんなさいデス;えろ神様がお出かけしちまいまして…;復活までしばらくお待ち下さいです。
それにしても、これだけえろを書いて、マトモに高耶さんのぱんつを書いたの、はじめてかも(笑;いつもうちの高耶さん、下着禁止だから(爆)

読んで下さってありがとうございましたの(>_<)