「TOY DOLL 1」




Presented by 黒417




先月、男が仕事でこの国を二週間ほど留守にした際、高耶が大学の仲間にキャンプに誘われ、断りきれずに参加し、しかもそれを隠していたことが、男を真剣に怒らせた。
男の玩具の身でありながら、男以外の他人と、一晩でも同じテントで眠るなど、許されることではない。



この日、持たされている携帯が鳴ると同時に、男の冷たい声が響いた。
『……俺がいない間に、おいたをしましたね、高耶さん』
「なっ……」
それと同時に、インターフォンが鳴り、宅配便で大きな封筒が届けられる。

『開けてごらんなさい』
云われるまま、震える手で包みを破ると出てきたのは、河川敷で水浴びをしている全裸の高耶の写真パネルと、何かの入った紙袋だった。
「……!」
たちまち、高耶の全身が凍りついた。明かに先日のキャンプの際、撮られたものだ。
背後から望遠で撮影されている為、顔はわからないが、この後姿は、高耶を知る者なら、一目でわかる。
(まさか……武藤が?)
真っ先に武藤潮の名が浮かんだ。
武藤がカメラを趣味にしているのは周知の事実だったし、それに、一緒にキャンプに出かけた仲間で、望遠機能のついた一眼レフを持っていたのも彼だけだ。
でも、どうしてこんな……。

『あるギャラリーで、新人賞として展示されていたものですよ。俺のいない間に、俺以外の男に、こんな姿を撮らせるなんて……随分、いい度胸をしていますね』
「ちがっ……!」
叫ぶ高耶の声は、冷たく遮られる。
『いいわけは、後で聞きますよ。それより、すぐに仕度をして外出です。これだけのことをしたのだから、覚悟はできていますね?しばらくは帰れませんから、そのつもりでいらっしゃい』
その言葉に、高耶は唇を噛み締めた。

『紙袋の中のものを出してご覧なさい?』
「……ッ、」
命じられるまま、のろのろと紙袋に手を伸ばすと、出てきたのは、グロテスクな形状の電動プラグと、透明なゼリーの入った大きなボトルだった。それらを見た途端、高耶の端正な顔が歪んだ。
眼にするのもおぞましいそのプラグと、ゼリーを用いればどうなるか、高耶はいままで、嫌というほどその身に思い知らされている。
男は冷たく云い放った。
『ジーンズを脱いで……下着もです。後はどうするか、わかりますね?』





デスクに置かれた携帯の付属カメラが、自ら玩具を銜えようとする仰木高耶のあられもない姿を映し出している。
震える手で、手にした玩具をおずおずと後ろへ持っていこうとした時、たちまち、ハンドフリーにセットされている携帯のスピーカーから、男の叱責が飛んだ。
『誰がそのまま挿れていいと云いましたか?お仕置きだと云ったはずですよ』
「……ッ、」
許されないことを悟った高耶は、唇を噛み締め、震える手でゼリーのボトルを取り上げた。
蓋を開けた途端、媚薬独特の甘い芳香が漂う。
『遠慮しなくていいんですよ。あなたはそのお薬が大好きですからね』

命じられるまま、高耶は震える手で玩具をボトルに根元まで突っ込んだ。たちまち、玩具は淫らなゼリーでべっとりと濡れる。
ほんの少量使われただけでも、耐えられないのに……こんなものを挿れたら、いったいどうなるかわからない。

躊躇していると、再び、スピーカーから冷たい叱責が飛んだ。
『何をもたもたしているんです。今更、処女ぶって見せても無駄ですよ?眼を放せば、すぐに他の男にあんな写真を撮らせる淫乱のくせに』
その口調にはまったく容赦がない。高耶は半ば自棄になって、媚薬に濡れる玩具を後ろへと持っていった。

「ンン……ッ、」
いつも男を受け入れるあの場所に、玩具の先端が触れた瞬間、堪え切れない声が零れる。
「クッ……」
そのまま、歯を食いしばるようにして、高耶は己の手で、玩具を根元まで沈めていった。
「アーッ……」
高耶が自ら玩具を銜えるその姿と、噛み締めた口端から零れる切ない声は、携帯のカメラとスピーカーを通じて、男の元に届いていた。
グロテスクなプラグに体を割られ、肩で息をしている高耶に、男が告げる。
『ちゃんと根元まで飲み込めましたか?そうしたら、すぐに服を着て家を出て下さい。行き先は後で指示します。わかっているでしょうけれど、この携帯の通話を切っては駄目ですよ』





そして、命じられるまま電車を乗り継ぎ、新宿まで出てきた頃には、高耶の息はすっかり上がって、もはや歩くこともままならない状況になっていた。
玩具を銜えた箇所は灼けそうな熱さと痒みで、気を張っていなければあられもない声で叫び出してしまいそうだ。
後ろへの刺激でジーンズの下、張り詰めたペニスも悲鳴を上げている。
敏感な粘膜から、たっぷりと淫らな薬を吸収させられた為に、うまく呼吸ができず、立っているのもつらいのに、それでも高耶は立ち止まることを許されなかった。

シャツの胸ポケットの携帯に繋げたインカムを通じて、男は尚も歩くように指示してくる。
人目を避けたいのに、男はあえて人の多い、大通りばかりを選ぶ。
東口の改札を抜け、階段で地上に出、アルタ脇を抜け……男は歌舞伎町方面へ進むように指示してきた。
靖国通りの長い横断歩道をどうにか渡りきったところで、とうとう足が止まってしまった高耶に、男は尚も叱咤するように云った。

『……誰が立ち止まっていいと云いましたか?しっかり歩いて下さい。そんなに赤い顔をして……もじもじと腰が動いているじゃないですか。いやらしいひとだ。みんながあなたを見ていますよ?』
インカムの向こうから、男が揶揄るように囁く。
『も……ゆる……し……』
雑踏の中、男が何処で自分を見ているのかを確かめる術も、もはや周囲の眼を気にする余裕すらなく、泣きながら哀願の言葉を口にする高耶を、人々が何事かと振り返る。

『……なお……』
もう、これ以上は歩けない。容赦なく降り注ぐ好奇の視線。
その時、それまで沈黙していた体内の玩具が前触れなく振動をはじめ、同時にまるで感電したかのように高耶の全身がビクンと震えた。
「───!」
雑踏の中、玩具によってもたらされた、強制的な絶頂。
ヒーッという悲鳴を、かみ殺せたのは奇跡だったかもしれない。





突然、その場に崩れるように倒れ込んだ高耶に驚き、駆け寄る人々に、果てた顔を見られたくなくて、顔を覆う高耶を、真っ先に抱き起こしたのは、紛れもなく、黒いスーツ姿のあの男だった。

あまりのショックで声も出ない高耶に、通りすがりの医師を装って、男は穏やかに話かけてきた。
「……大丈夫ですか?私は医者です。大丈夫、心配いりませんよ」
男が医師と名乗ったので、周囲を取り囲んでいた人々も、安心したように一歩下がると、遠目からそれとなく様子を見つめている。
「ひっ……ク……」
「呼吸が苦しいですか?顔が真っ赤ですよ……熱があるのではないですか?」
男は云って、わざとらしく高耶の額に手を当てた。
「ああ、やっぱり。酷い熱だ。いけませんね……私の病院がすぐ近くですから、診てあげましょう」

立てますか?
そう云って、男は高耶の肩に手を回すと、強引に立たせた。
「……ッ!」
体内に、まだ振動を続ける玩具を銜えたままの為、たちまちあげそうになる悲鳴を高耶は必死に飲み込む。
「しっかりして下さい。すぐ近くですからね……」
白々しく、急病人を力づけるような言葉を吐いて、細い体を支えるようにして歩き出した時、男は高耶だけに聞こえる声で囁いた。

「こんなに大勢のひとの見ている前で、オモチャでイってしまうなんて。本当になんて淫らなひとだ」
「………ッ」
何か云い返したくても、今の状態ではマトモに声すら出せず、高耶は泣きながら首を振るしかなかった。

そうして、その場を離れた男が選んだ先は、歌舞伎町の外れにある、いかにもという外観のラブホテルだった。
部屋の案内を一瞥した男は揶揄るように笑い、
「あなたももう、歩けないようだから、ここにしましょうか。SM専用の部屋があるそうですよ。あなたのような淫乱を躾なおすには、ちょうどいい」

嫌々と首を振っても、許されるわけもなく、媚薬と玩具に狂う体を沈める術もなく。
男に引きずられるように、仰木高耶は淫らなホテルのエントランスに消えた。



To Be Continued.



こんにちは、黒417です。
以前、某映画のパロで、携帯&インカムプレイを書いたんですけど、けっこう気に入ってまして(鬼)もうちょっとインカムを使って、高耶さんをお外で虐めたくなってしまいまして…(腐ってる;

てゆーか、この二人の関係、謎ですね(笑;
うちの直江にしては、めずらしく高耶さんを閉じ込めずに大学に通わせたり、アパートに住ませたりしてるみたいですし(笑;でも、やるこた鬼ですが(-_-;)
高級ホテルじゃなくて、場末(爆)のラブホに連れ込んだのも、お仕置きの一貫でして……続き書きたいです。やってるだけになっちゃいますけど(^^;

てゆーか、最近、高耶さんを虐めてばっかりだなあ…;
高耶さんファンの方ごめんなさい!(>_<) でも、これも愛ゆえなのでv
読んで下さってありがとうございましたの(>_<)