「嫉妬2/後編」




男が注視する中、震える指先でネクタイが緩められると、きつく着込んだシャツの下、隠されていた黒い皮の首輪があらわになった。
首輪とハーネスは留め具で繋がれ、南京鍵がかけられて、高耶の意志では外せないようになっている。

体内で暴れる淫具の責めが耐えがたく、その刺激から意志とは関係なく勃ちあがってしまったペニスに、ハーネスに繋がれたリングが食い込んで、立っているのもつらい。
ボタンを外す指も覚束ず、もたつく高耶に、男の穏やかだが容赦のない叱責が飛んだ。

「何をもたもたしているんです?今更、恥かしがることでもないでしょうに……しょうのないひとですね」
「……ッ、」
唇を噛み締め、崩折れそうな体を叱咤して、ようやく高耶が生まれたままの姿になると、男は、たったいま外されたばかりのネクタイを取り上げた。
縛られる……縋るような瞳が男を見たが、男は構わず、馴れた手付きで手際良く後ろ手に縛りあげた。

次に男は、高耶の仕事用の、肘掛が大きく取られた椅子を示して、脚を開いて坐るように命じた。ただでさえ、ハーネスと淫具に責められ、後ろ手に戒められている不自由な体では、うまくバランスを取ることができない。
息も絶え絶えに、どうにか椅子に腰掛け、震える片膝を肘掛にかけると、その動きでコックリングに勃ちあがったペニスが尚もきつく締めつけられて、高耶の唇から声にならないうめきが漏れた。

あられもない姿勢で、股間を締めつけられる苦痛を必死に堪える高耶の、もう片方の足首に、男は無造作に手をかけた。不意をつかれ、バランスを崩して背もたれに倒れ込む唇から悲鳴に近い声があがる。
「随分、不自由そうだから、手伝ってあげますよ」
男は笑って、その膝を強引に肘掛にかけさせた。
「アアッ……」
両脚を肘掛にかけられたことで、座面から腰が浮きあがり、いやでも腰を突き出す淫らな姿勢をとらされて、高耶の目から新たに羞恥と屈辱の涙が滲む。
背もたれだけで体を支える不自由な体に、容赦なく食い込むハーネスが、尚もきつくペニスを責め立て、高耶はたまらず掠れた悲鳴をあげた。

大きく肩で息をする高耶の、涙に濡れた端正な顔を男はうっとりと見つめる。
ハーネスの食い込む双丘の狭間からは、仕込まれた淫具の振動音が響き、それを含まされている双丘が微かに震える様がはっきりと見て取れた。
「もう、ココをこんなにして……いやらしいひとだ」
男は、氷のように冷たい指先で、リングに戒められてすっかり色の変わってしまった先端をゆるゆると辿った。
「ひっ……」
敏感な先端に触れられ、責め立てられて、細い体がビクンと跳ねる。
淫らな指の動きに刺激されて、根元を締め付けられ、吐き出すことを禁じられた鈴口に、堪えきれずに透明な雫が滲み出す。
「おいしそうな蜜が零れてきましたよ……」
殊更羞恥を煽るように囁くと、男は徐に顔を埋めて、尖らせた舌先でその蜜を拭うように舐め取った。

「ヒーッ……!」
たちまち、ビクビクと痙攣する体。
「そんなにいい声を出して……誰かに聞かれても知りませんよ?」
揶揄るような声に、高耶は唇を噛み締め、ぼろぼろと涙を零す。
「あなたのぼうやはこんなになっていますが、ココはどうでしょうね?」
男は尚も嘲るように笑って、ハーネスの食い込む双丘の狭間を指で辿った。
「ッ……!」
男の手でハーネスに繋がれた淫具の留め具が外される。奥まで埋め込まれていた楔型のそれが、激しく振動したまま引きずり出されると、高耶はひいっと悲鳴をあげて細い体を仰け反らせた。

男の目の前で、長時間、淫具に犯され続けた蕾は、新たに含むものを求めて淫らに息づいている。
「自分でもわかるでしょう?あなたの下のお口は、今にも入れてほしくてピクピクしていますよ」
「ちがっ……、」
揶揄るような囁きに、泣きながら嫌々と首を振る高耶に、
「淫乱なあなたにぴったりの、いいものをあげる」
男は笑って、アタッシェから医療用のクスコを取り出し、ヒクつく蕾に丸く閉じた先端を押し当て、ゆっくりと沈めていった。
「アアッ……やっ……!」
冷たい金属の嘴が、傷つけないよう慎重に、だが容赦なく狭い襞を押し拡げていく。

「痛ッ……」
苦痛にうめく高耶に、男は諭すように、
「このぐらい、痛いわけがないでしょう。いつも俺のを飲み込んでいるくせに」
キリキリと螺子が巻かれ、直系で3cm程度開かせたところで、男は新たな淫具を取り上げた。
解放プラグと呼ばれる、中が空洞になった筒状のプラグである。
男はぱっくりと口を開けた襞に手にしたそれを押し込み、クスコだけを引き抜いて、改めてハーネスと解放プラグのそれぞれの留め具を繋いで固定し、満足気に微笑んだ。

閉じることを禁じられた蕾が、男の目の前で淫らな口を開けている。
「淫乱なあなたにぴったりのおもちゃでしょう?こんなにぱっくりとお口を開けて……」
「やっ……こ、んなっ……」
男が、わざとらしく取り出したレーザーポインタで、いつも自分を受け入れる襞が蠕動する様を観察していると、突然、デスクの隅に置かれていた高耶の携帯が鳴った。

途端に、高耶の体がビクンと強張る。
携帯を取り上げ、相手のナンバーをチェックした男は、サディスティックに微笑んだ。
「……噂をすれば、彼からですよ」
よりによって、こんな時に……最悪のタイミングである。
蒼白になった高耶の耳元に、男は容赦なく通話ボタンを押した携帯を押し当てた。

『もしもし、仰木?俺だけど』
「……武藤……ッ」
カラカラに乾いた喉から、高耶は必死に掠れた声を絞り出す。
『仕事中、悪いとは思ったんだけど……本、届いただろ?写真見てくれたかなーと思ってさ。自分でゆーのもなんだけど、社内でもすげー好評なんだ。明日が楽しみだよ。発売されたら絶対、話題になるぜ』
静まり返った室内に響くハイテンションな武藤の声は、男にもはっきりと聞き取れた。親しげな口調が、男の神経を逆撫でする。

武藤は高耶の異変に気づくことなく、ここぞとばかりに切り出した。
『それで、前にも云ったけど……仰木さえよけりゃ、マジでもう一度撮らせてくれないかと思ってさ……お前、いい顔してる。変な意味じゃなくて、こんなに撮りたいと思う奴に出会ったのははじめてなんだ。お前には絶対、人を引きつける何かがある……』
「む、武藤っ!」
これ以上、話させてはならない。なんとか通話を切り上げようと、必死に張り上げた声に、武藤は驚いたように黙った。
「……悪い……今……手が放せないんだ……またにしてくれないか……」

今の高耶にはそれだけ云うのが精一杯だった。平静を取り繕ったものの、酷く震えて掠れた声。変に思われなかっただろうか……。
だが、高耶が多忙なのを知っている武藤は、気を悪くした風でもなく、
『悪ぃ、そうだよな、仕事中だもんな。ごめん。後でかけなおすよ。またな』
そう云って、電話は切れた。

「……ッ、」
緊張が途切れたのか、力の抜けてしまった高耶に、
「もう、いいんですか?俺のことは気にしないで、もっと話して下さったってよかったのに」
折り畳んだ携帯をデスクに置いて、男が微笑む。
穏やかな態度や丁寧な言葉遣いに変わりがないが、今の武藤の電話が、ただでさえ機嫌の悪い男を、尚も怒らせたことは確実だった。
「彼は随分と、あなたを気に入っているようですねえ。あなたを撮りたがっていたじゃないですか」
高耶は、力無く首を振るばかりである。
男はわざとらしく、淫らな姿勢を強いられた細い体を見下ろして、
「いい眺めですよ。せっかくですから、今ここに彼を呼んで撮ってもらいましょうか。あなたのこんな姿を撮れると知ったら、きっと喜んで飛んできますよ。それに」

男は意地悪く、解放プラグによって開かれたままの襞を覗き込んで付け加えた。
「あなただって、自分の中がどうなっているか見てみたいでしょう?」
「……ッ」
ぼろぼろと涙を零しながら、嫌々をする高耶に、男は思い立ったようにマウスピース型の口枷を取り出して強引に噛ませた。

上下の口を開かれた、自分だけの生きた肉の人形。
とめどなく零れる涙、飲み込むことも許されず、開いた口端を伝う銀の雫を指で拭って、尚も男は冷たい言葉を吐きかける。
「恥かしい格好ですね。まるで今にも犯してほしいって、せがんでいるように見える。あなたほどの淫乱は見たことがありませんよ」

その時、今度は男のデスクの電話が鳴った。何やら、営業部からの緊急の呼び出しのようだ。
「……わかりました。仰木社長は今、手が離せないので、私が変わりに行きます」
男は短い会話を終えて電話を切ると、縋るように自分の姿を目で追う高耶に、諭すように云った。
「ちょっと打ち合わせで出てきます。すぐに戻りますから待っていて下さい。ああ、一人では退屈でしょうから……」
男はクスッと笑って、高耶が坐らされている椅子の背もたれを掴むと、ぐるりと向きを変えさせた。壁面に備え付けのクロゼットの扉に張られた大きな鏡が、たちまち、あられもない姿を映し出す。
羞恥のあまり顔を背ける高耶に、男は満足気に微笑んで、
「これで淋しくないでしょう?鏡の中の自分と、しばらく遊んでいるといい」
こんな姿で、白昼、もしかしたら誰かが入ってくるかもしれないオフィスに置き去りにされる……恐怖から、必死に首を振り、許しを乞う高耶の額に男はいとおしげに口づけた。

こんなに酷いことをされて……かわいそうにね。
でも、あなたが悪いんですよ、高耶さん。


BY 黒417



こんにちはv ふがいない417を見かねて来臨しました、おひさしぶりの黒417ですのv 後編、い、いかがでしたでせうか……; 
「犯ってないじゃん!」「ココで終わりかよ!」という皆様のお怒りの声が聞こえてきそうですが、何せリハビリ中なもんで…(^-^;)でも、自分的にはひさびさに萌え萌えで書けましたのv 
上下のお口ぱっくりなダッチ高耶さんの運命やいかに?って、そんなの直江のマグナムで(コラ;)思いきり塞いであげるに決まってるやないけ!ほほほほほv(崩壊)

この続きは嫉妬2/リローデッドで(爆)。頑張りますの。待っていて下さいね。 

ps.いろいろご心配下さった皆様、すみません;&ありがとうございましたv
少しづつ復活しつつありますんで……見守って下さいです(^-^;)
読んで下さってありがとうございました。