「痴×電車(爆)」
昨夜、遅くまで高耶を貪った男は、別れ際にブランド物の紙袋を手渡しながら微笑んだ。
「明日はたまに、電車に乗ってみましょうか。きっと新鮮ですよ。朝、8時15分に新宿駅にいらっしゃい。スーツの上にこのコートを羽織ってきて下さい。ただし、下着をつけてきては駄目ですよ」
そして翌朝。朝の新宿駅はいつものようにラッシュアワーを迎えていた。
仕事や学校へ急ぐ人々の中で、高耶の足取りはひどく重い。渋谷方面の山手線ホームに向かう階段を昇りきった所で、常に持たされている「命令」専用の携帯が鳴った。
電源を切ることは決して許されない、男の奴隷になった日から、24時間高耶を監視し、縛る枷。
高耶はのろのろと、折りたたみ式の黒い携帯電話を開いてメールを読んだ。
『おはようございます、高耶さん。約束通り、下着をつけずに来ましたか?8時24分発の先頭車輌の最先端に乗って下さいね』メールにはいつも通り、添付ファイルが添えられているが、開かなくてもそれがどんな画像かは容易に想像がつく。
逆らえば、今、この瞬間にもネットを介してその画像がばらまかれることも。
唇を噛み締めるが、無論、高耶に選択枝はない。
新宿からオフィスのある渋谷まで、たかだか三つの区間だが、この時間帯のラッシュは半端でなく凄まじい。
電車がホームに入ってくると同時に、開いたドアから大勢の人間が吐き出され、それを上回る人間が一気に狭い車内へと雪崩れ込む。
高耶は人の波にもみくちゃにされながらも、どうにか指定された車輌の先頭部分に乗り込んだ。
電車が発車するや否や、すぐに背後から抱きしめてくる感覚があった。
「……おはようございます、高耶さん」
ぎゅうぎゅうの車内で、ぴったりと背後に寄り添って、高耶にだけ聞こえるように男が囁く。
「……ッ、」
羽織っている薄手のコートの中に、当然のように差し込まれた腕で、ゆるりと前を撫で上げられて、高耶は思わずあげそうになる声を必死で堪える。
「約束通り、下着はつけていないようですね」満足げな吐息のような囁きとともにスラックスのボタンが外され、ジッパーが下ろされて、冷たい手のひらに直に包み込まれる。
「少し、勃ってますね……」
それは下着をつけずに歩いてきたから、スラックスの裏地に擦れたせい……そう、反論したくとも、この状態では人に聞かれてしまう。
男の囁きは尚も続く。「電車なんて滅多に乗らないから、大勢のひとに揉まれて、感じてしまったんでしょう?……いやらしいひとだ。悪い子にはお仕置きしないとね……」
屈辱に歪む顔を誰かに見られたくなくて、高耶は俯いたまま、唇をきつく噛み締める。
代々木に停車して、また新たに乗客が乗り込んでくる際、男は高耶をさりげなく車輌のいちばん隅に追いやって、その背後から覆い被さった。
満員電車の片隅にできた、淫らな死角。
すぐに背後から再びやんわりと握り込まれ、ゆるゆると弄ばれ、感じやすい高耶の息はすっかり上がってしまい、声を殺すのに必死である。
恥かしいのはもちろんだが、男の自分への執着が尋常でないことをその体で知り尽くしている高耶は、男以外の人間にあんな声を聞かせてしまったら、後でどんな目に遭わされるかわからず、その方がずっと恐ろしかった。
原宿を過ぎると、それまでずっと撓るペニスを弄んでいた指が、不意にそこを離れて、今度は背後から差し込まれた。
高耶自身の先走りの蜜で濡れた指が、双丘の狭間の小さな入り口を探り当てる。
濡れた指先があやすように襞を辿ると、次の瞬間つぷっと沈んだ。「……ッ!」
細い体がビクンと撓った。
第二関節ぐらいまで、潜り込んだ指先が、体内で蠢いている。
数回の出し入れの後、指の変わりにそこに差し込まれた細い管のようなもの……それが何かを悟って、高耶は声にならない悲鳴を上げた。いつも体を繋げた後、嫌がる高耶に「洗浄」と称して度々行われるその行為を、まさかこんなところで……!
「悪い子にはお仕置きだって、さっき云ったでしょう?」微かな笑いを帯びた囁きとともに、容赦なく生ぬるい液体が体内に注ぎ込まれる。
高耶は必死で歯を食いしばり、悲鳴を堪えた。
やがて、すべてを注ぎ込んで管を引き抜いた男は、事務的にそこにシリコンのプラグを差し込むと、手早くスラックスのジッパーを上げてやり、身支度を整えてやった。「いくらなんでも、こんなところでお漏らしはしないでしょうけれど、念の為に栓をしてあげましたからね……感謝してくださいね」
楽しげな囁きに、苦痛に喘ぐ高耶は言葉もない。
「………ッ」
前を勃ったままイけずに放り出されて、後ろは激しく込み上げる排泄への欲求で高耶は狂いそうになる。
背後から抱きしめる体が小刻みに震えているのが、いとおしい。
渋谷駅のホームまであと少し、と云うところで、突然、電車のスピードががたんと落ちた。ただでさえ蒼白の高耶の顔色が、紙のようにしろくなる。無情に告げるアナウンス。
『停止信号です。前に電車がつかえております。発車までしばらくお待ちください』
もはや限界状態の高耶には、1秒、1秒が地獄である。実際には数十秒だが、高耶にとっては永遠と思われる時間の後、ようやく電車は渋谷駅ホームに滑り込んだ。
雪崩れのように我先に降りていく乗客に混じって、ダッシュで飛び降りようとした腕を、男は掴むと再び紙袋を手渡して笑った。
「……着替えですよ。高耶さん」
羞恥と屈辱の涙に歪む端正なその顔が、尚も激しい嗜虐をそそることを、このひとは気づきもしないんだろう。
ひったくるようにその紙袋を奪い取って、階段を駆け下りていく後ろ姿を、男は苦笑しながら見守った。
チップトイレの個室に駆け込み、なんとか事無きを得た高耶は、屈辱にぼろぼろと涙を零す。
男に云われた通り、スラックスのジッパーの辺りには、散々弄ばれたせいで先走りの染みができ、着替えがなくては、とても会社へは行けそうになかった。まだ半勃ち状態の前も、出してしまわなくては、到底収まりそうにない。
勝手に射精することは許されていなかったが、我慢できない。どうせ、あの男は何もかも自分のことを見通していて、淫らな折檻をくわえるだろう。(畜生……!)
淫らな己の体が呪わしく、啜り泣きながらも、高耶は自暴自棄になり、おずおずとその手をそこへ持っていき、しろいものを吐き出した。
ようやく高耶がオフィスに現れた時は、とっくに始業時間を過ぎていたが、無論、それを咎める者は誰もいない。
「おはようございます」
社員は皆、すれ違いざま、丁寧に頭を下げてくる。重い足取りで向かった先は、ビルの最上階に位置する一室。
ため息とともにドアを開けると、秘書席に、涼しい顔であの男が坐っていた。
男は立ちあがってにっこりと微笑んだ。
「おはようございます。仰木社長」高耶の目が、きつく男を見据える。
そんなことをしても、無駄だとはわかっていたが。
まだ二十歳にも満たない高耶が、莫大な借金を残して急死した父親の会社を引き継ぐには、どうしてもこの男の後ろ盾が必要だった。
この悪魔のような男から、死ぬまで逃げられない。
高耶は苦しげに視線を逸らすと、男の前を通りすぎ、奥へ続くドアに進んだ。
男はスッと立ちあがって、エスコートするようにドアを開ける。「社長室」と云う名の檻に、高耶は自ら重い一歩を踏み出した。
BY 417
何書いてるんでせうね、本当に私って……(/_;)新刊発売を聞いて、例によって動揺しまくって書きなぐってしまったのがコレですの(死刑;
そんなわけで当サイト初のリーマンものです(^^;>どこが!ってか他にタイトルないのかよ、オレ…(笑;
最初は普通に、上司と部下のつもりだったんですけど、高耶さんが下っ端ってのは私的にピンと来なかったので、お約束でありがちですがこんなんなってしまいました(涙;
悪魔の秘書直江×社長奴隷高耶さん…(笑;年齢は直江が30歳、高耶さんが19歳……だと思って下さい(^^;ちなみに、朝の山手線のラッシュは以前、私も通勤しましたが、マジで死にます(笑;とりあえず、続く…かもしれません。サディスティックな秘書直江ってMな私の爛れた煩悩をそそるのでvvってか、続かなくていいよ……(涙
読んで下さってどうもありがとうございました……の……(逃げ><!