UNTITLED 6

BY SHIINA



……結局。
直江に存分、好き放題されて、いつ解放されたのかもわからないまま眠りに就いたオレが、ようやく目を覚ましたのは、翌日の朝だった。
当然、体はガタガタで、ものすごく空腹だったけどなかなか起きられなくて……

やっとの思いでベッドから這い出て、シャワーを浴び、ルームサービスにありつけた時は、もう昼近い時間になっていた。
チェックインしたのが昨日の午後だから……殆どまる一日ぶりの食事と云うことになる。

直江はオレが次々と皿を平らげるのを、微笑しながら見つめている。
オレが「見てないで食え」と云うと、申し訳程度に皿に手を伸ばすけど……
気がつくとまた、オレが食べるのをじっと見ている。

「っだよ、見られてると食えねーだろーが」
すると直江はしれっとして、
「だって高耶さん、疲れてる感じが、すごく色っぽい。……ゾクゾクしますよ」
「あのなー!!」

フォークを振り上げて怒るオレに、直江はクスクス笑いながらすみませんと誤った。
ったく、どうしてこいつは朝っぱらから、んなことばっか!
そ、それに……
オレがこんなに疲れてんのは、誰のせいだと思ってんだよ!
だいたい、てめーはデカイ図体してるくせに、なんでそんな小食なんだよ。
オレなんか、どんなに食っても太れなくて、苦労してるってのに……

「何をブツブツ云ってるんですか、高耶さん?」
「……るさい。いいから、お前はオレに構ってねーでとっとと食え。命令だ」
「御意」
直江は楽しそうに笑うと、やっと真剣に食べる気になったらしく、ナイフとフォークを取り直して、自分の皿に手をつけた。

ようやく腹いっぱいになって、人心地がついたところで、直江がコーヒーを用意してくれた。
「はい、高耶さん」
「サンキュ」
そして自分もコーヒーを一口飲むと、オレに断わってからパーラメントに火をつけた。

……直江が煙草を吸ってるところを見るのは、決して嫌いじゃない。悔しいけど絵になるって云うか……
それにこいつ、食い物食うよりコーヒーや酒や煙草のが、本当にうまそうなんだよな。

……オレは無意識のうちに、直江を見つめてしまっていたらしかった。
「もしかして高耶さん……見とれてますか?」
ふいに云われて、ハッと我に帰った。
「だ、誰がっ!」
慌てて目を逸らそうとしたオレの前に、直江の右手がスッと伸びた。
そして、突然何をするのかとびっくりしているオレの顎をそっと掴んで、ものすごく真剣な、思いつめたような瞳で云った。

「俺はあなたに見とれていますよ。いつの瞬間も」
「………」

……真っ赤になったオレを見て、満足したとでも云うように、直江は掴んでいた手を離し、クスクスと笑った。
「……可愛いひとだ」
「るせー。可愛いゆーな!」

オレが毒づくと、直江はまた苦笑して、
「おや、高耶さんは可愛いと云われるのはお嫌ですか?」
「男が可愛い云われて嬉しーかよ」
「それじゃあ、綺麗ですよ」
「あのなー!」
……あー、駄目だ、もう。マトモにこいつの相手してたらオレが疲れるだけだ。
オレは直江を無視して、コーヒーを飲むのに集中することにした。

「高耶さん」
……無視だ、無視。
「たーかやさん」
無視、無視。
「……ひどいですねぇ……無視するなんて」
なおもオレが無視してコーヒーを飲んでいると、直江は大袈裟にため息をついて、手にしていた煙草を灰皿に置いた。
「……わかりました、あなたがその気なら……俺にも考えがあります」

げっ。
こいつの考えることなんて、どーせロクでもないことに決まって……うわ、いきなり立ち上がって手を伸ばして来やがった!オレのコーヒーカップを取り上げて、テーブルに置き……
「……っだよ、何すんだよ!」
思わず俺が叫んだのと、直江に腕を掴まれグッと引き寄せられたのは同時だった。
「俺にはあなただけなのに……あなたが悪いんですよ、高耶さん」

うわー!こいつ、目がマジじゃんかよ!冗談じゃねー!ゆーべあんだけやったってのに、今やられたら、オレ体もたねー!!
「おいっ、よせって、直江!」
のしかかってくる直江に、オレが必死で叫ぶと、
……オレの顔を見ていた直江は、いきなりクスクスと笑い出した。

「……あなた今、真剣に怯えた顔をしましたね。何を想像したんでしょうねぇ、高耶さんは」
「……ッ!」
その途端、オレは真っ赤になって顔を逸らした。何のことはない、からかわれたのだ。

あーくそ。アッタマ来る!
直江はなおもクスクスと笑いながら、オレの耳元に囁いた。

「怯えた顔も可愛いですよ。本当にあなたと云うひとは……そそりますよ、高耶さん。何なら、このままご期待にお答えしましょうか?」
「……死ね!」




おそまつさまでした(笑)この話はまだまだ続く…予定です♪


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