Decadent Eve パラレル劇場
「メイド高耶」シリアスバージョン


作:milky417(アホ)
CAST★屋敷の主人:直江信綱(攻)
出張メイド「景虎」:仰木高耶(受)

カメオ出演(笑):コタ(運転手)




午後五時──いつものように直江屋敷の正面玄関に、黒塗りのリムジンが横付けされる。運転席のドアが開いて、髪を後ろで括ったスーツ姿の長髪の男が降り立った。


男の手で後部座席のドアが恭しく開かれた。
現れたのは、黒いミニ丈のパフスリーブのワンピースに、白いフリルのレースのエプロンもまぶしいメイド服に身を包んだ一人の青年。
年は二十歳ぐらいだろうか?整った鼻梁、少し肉厚の唇。
クセのない漆黒の髪を飾る白いレースのカチューシャには、最高級メイドの証である意匠が施され(どんな?;)、何より目をひくのはその端正なルックスだけでなく、彼のまるでルビーのような深紅の瞳だった。

「……行ってくる」
そう云いおいて、一人、屋敷へと入って行く青年。頭を下げつつ、長髪の男はその後ろ姿を複雑な思いで見送った。




青年の長い指先が重い扉を叩くや否や、すぐにギイ…、と云うにぶい音がしてドアが開かれ、いつも通り黒いスーツに身を包んだ屋敷の主人、直江が穏やかに迎え入れた。

「──こんばんは、直江様。『上杉』より参りました、景虎です。今宵の御指名、感謝いたします」
規定通りの挨拶をして、深々と頭を下げる高耶に、直江はにっこりと微笑んだ。
「いらっしゃい。お待ちしていましたよ──高耶さん」

高耶が屋敷の中へ消える真際、直江と高耶を見守っていた長髪の男の視線が一瞬かち合った。直江が、このひとは自分のものだと誇示するかのように、徐に高耶の肩を抱く。
いつも無表情な長髪の男の掌が、秘かに握りしめられた時、屋敷の扉はすでに硬く閉ざされていた。





出張メイド「景虎」こと、本名・仰木高耶が直江の屋敷に通うようになって、二ヶ月になる。あまりの高額ゆえ、誰もが呼びたくても呼ぶことのできなかった高耶の、初めての客が直江だった。

男の身でメイドになったからには、おそらく複雑な家庭の事情があるに違いないが、そんなことはどうでもいい(爆)。
この何ものにも変えがたい、素晴しいひとが出張メイド。
予約が入れば、夕方、一夜の主の家に出向き、ディナーを準備し、主人が望めばその身を持って仕える──それが直江には大問題だった。高耶を自分以外の誰にも触れさせたくなかった。

幸い、高耶はそこらの人間が、おいそれと呼べるような値段ではない。
創業四百年を誇る、最高級出張メイド店『上杉』の中でも、彼はNo.1である。
高耶を毎晩どころか、一日でも呼べる財力のある者は数少ないが、『上杉』の深紅の瞳のNo.1「景虎」に興味を示す者は後を立たず、最近は政治家や高官などが、しきりと彼を呼びたがっていると聞く。高耶を一目見れば、誰でも手に入れたくなるに違いないのだ。

直江は間違っても高耶が自分以外の人間の家へ行くことのないよう、毎月、破格の金を積んでは、高耶を借り切っているのだった。




長い廊下をダイニングルームに向かって歩きながら、直江は高耶の肩に腕を回して囁く。
「高耶さん……考えてくれましたか?」
男の言葉に、高耶は俯く。
「その話は……」
毎日のように繰り返される会話。
直江は高耶を『上杉』から身請けして専属メイド、いや妻として迎えたいと切望していた。
だが、高耶はそれを、かたくなに拒んでいる。
今も、直江に金で買われて毎日この屋敷に来ているのだから、専属なようなものなのだが、それでも高耶には身請けされることに、どうしても抵抗があった。
「お願いです。オウギタカヤ──うんと云って下さい。あなたと、もう一分一秒も離れていたくない。高耶さん、あなたを……」
愛しているんです。

だが、血を吐くような男の叫びにも、高耶は苦し気に首を振る。
「なぜです?……あなたは俺を好きだと云ってくれた。仰木高耶と云う、本当の名前まで教えてくれたじゃないですか!」
メイド服の肩を掴み、思わず声を荒げた男に、高耶は目を伏せて、
「だからこそ……だ、直江。お前に金で買われてこの家に来たら、その時点でオレはお前と対等でなくなってしまう。オレはこの仕事に誇りを持っている。オレは──お前と対等でいたいんだ」
「高耶さん……」
くもりのない、清冽な深紅の瞳が真直ぐに男を見る。
男は諦めたように微笑して、
「わかりました……でも、俺はあなたを諦めませんよ。絶対に」
高耶の目元がホッとしたように和らぐ。
そのまま、高耶は一人、キッチンへと消えた。





午後七時。バロック音楽が静かに流れる中、今夜のディナーがはじまった。
広大な大理石のダイニングテーブルの中央には、最高級メイド仰木高耶自らが生けた薔薇。カートには、高耶手製の、芸術とも云える素晴しいディナーの品々が並べられている。
直江の傍らに立った高耶の手で、キャンドルに灯が灯され、高耶が直江のグラスにワインを注ごうとした時──ふいに立ち上がった男の腕の中に、高耶は抱き込まれていた。


「直江ッ……、」
まだ、料理にまったく口もつけていないのに、……戸惑ったように自分の名を呼ぶ高耶の首筋に、直江は唇を押し当てながら、
「……高耶さん、空腹で死にそうなんです。どうか哀れなこの男に、今夜は先にメインディッシュを下さいませんか?」

囁きとともに、メイド服の上から熱い昂りを押し付けられ、薔薇色に染まる頬。
静かに伏せられた瞳は、彼の精一杯の肯定。
許されたことへの歓喜に震え、背後へとまわった男が細い肩を抱き、柔らかい黒髪に口づけ、その唇が綺麗な項へと降りて行くと、高耶の唇から微かな吐息が溢れた。
まわされた手で、メイド服の上から胸の突起を弄ばれると、それだけで敏感すぎる高耶の息は上がってしまう。
「高耶さん……」
胸をまさぐっていた手は、下へと降りて、ミニ丈のスカートの中へ潜り込んだ。
「クッ……」
敏感な箇所をシルクのショーツの上から弄ばれて、高耶が身を捩る。数回、撫で上げられただけで、高耶のソレは震えて勃ちあがった。

こんなに儚く、こんなに感じやすい体をして──自分を好きだと云ってくれたのに、自分のものにはならないと云う。
どうして……あなたと云うひとは、そういうひとなのか。


高耶を毎日送り届けるあの長髪の男が、高耶への想いを内に秘めているのを、直江は知っている。高耶を欲しがっているのはあの男だけではない、彼を見れば誰だって欲しくなる。


せめて一緒にいられる今だけは、この体に最奥まで自分を受け入れさせて、このひとが自分のものなのだと感じたい。
このひとに、この体に、あなたは自分のものなのだと思い知らせてやりたい。
直江は狂おしい熱に浮かされるように、高耶の果実をまさぐった。
「……なおっ、」
先走りに濡れるペニスを掌で握り込み、ゆるゆると愛撫してやりながら、片手で細い腰の大きなリボンを解き、ワンピース型のメイド服のジッパーを下ろす。
やがて、ぱさっと音を立てて、足元にメイド服が落ちると、高耶はレースのカチューシャと白いシルクのショーツとガーターにストッキングだけの、あられもない姿になった。

シルクのショーツは、勃ちあがった彼の形を如実に伝えている。
羞恥で真っ赤になった高耶は、それでも男に促されるまま、おずおずとテーブルへ昇り、静かに横たわると、目を閉じた。



揺れるキャンドルの灯に、照らしだされる肢体。
「高耶さん……」
震える声で名前を呼ばれて、濡れたルビーの瞳が直江を見る。
「高耶さん……!」
直江は自らもテーブルに上がると、白い素肌にむしゃぶりついた。
「なおっ……」
首筋をきつく吸われ、胸の突起に歯を立てられ、ショーツの中に差し込まれた手で、屹立したペニスを扱かれ、高耶が喘ぐ。きつく握り込まれ、親指の腹で先走りを零す鈴口をゆるゆると刺激され、思わず背を仰け反らせた高耶に、直江は
「あなたの新鮮なミルクを飲ませて下さいね」
と囁いて、ショーツを取り去り、ピクピクと震えるペニスに唇を寄せた。


「………ッ!」
男の巧みな舌で吸われて、高耶は身を捩る。
中から絞り出すかのように二つのボールを揉みしだかれ、熱い幹を吸われて目の前が白くなる。感じすぎて泣き声をあげかけ、堪え切れずに直江の髪を掴んで引き放そうとしても、直江は叱咤するようにソレを握りしめて、尚もきつく吸い上げた。
「アアッ…!」
あっけなく弾けた高耶の果実から断続的に迸るしろいものを、直江は音を立てて飲み干す。
「いつ飲んでも、あなたの蜜はとても甘い……」
飲み切れずに口端に溢れたものまで、徐に指先で丁寧に辿って舐め上げながら、うっとりと囁く男に、高耶はカッと頬を染めた。



「高耶さん……」
直江はその名を囁きながら、細く長い両脚を抱え上げ、そっと開かせた。
あらわになった箇所に、押し当てられる直江の熱い分身。
「──愛しています」
その言葉に、高耶が切な気に目を閉じた瞬間、それはグッと押し入ってきた。
「ウッ……」
まったく馴らされずに突き入れられて、思わず、細い腕が男の腕を掴んだ。抑え切れずに溢れる低い吐息が、受け入れる高耶の苦痛を物語る。
「高耶さん……」
狭い器官を強引に割って、直江が尚も身を進めようとする。
身を裂く苦痛から、本能的に逃れようとする体を許さず、最奥まで繋がると、それまで必死で耐えていた高耶は、堪え切れずについに小さな悲鳴をあげてその身を反らせた。
直江は、己の楔が高耶を貫く間、彼から一瞬も目を放さなかった。


奥まで繋がって、直江が脚を抱え上げたまま細い体の上にその身を倒すと、高耶は小さな悲鳴をあげた。
「ああっ……」
「高耶さん、あなたを……」
愛していると囁き、自分の名を呼ぶその声が、呪縛のように高耶を捉えた。

直江の分身を深くその身に受け入れたまま、高耶はおずおずと男の首に震える腕を回す。
二人は無言で互いの唇を、舌を貪りあう。
直江が動く度、男を受け入れている箇所から少しづつ苦痛ではない何かがじわじわと駆け昇り、感じ始めた襞は直江の分身を締めつけて、直江を快楽へと導く。


高耶の深紅の瞳は涙に濡れ、零れ落ちた雫を男の舌が拭う。
男の唇は唇を辿り、首筋を辿って、薄い胸の突起を愛おし気に含む。
「ア……」
敏感な胸を吸われて高耶の唇から苦痛ではない、甘い吐息のような声が溢れた。
見つめあい、やがてどちらからともなく込み上げる、己を、互いを、絶頂へと導かんとする衝動、すぐにはじまる律動。
直江は細い脚首を抱えたまま、深く腰をグラインドさせては柔襞を抉るように突き上げ、その度に高耶の唇からは、悲鳴のような吐息が溢れた。

受け入れる苦痛に快楽が勝る時、高耶は誰よりも貪欲で淫らだった。
後ろを犯され、前立腺を刺激されて、高耶の再び屹立した先端から先走りの涙がとめどなく溢れて幹を濡らし、直江が出入りする度、柔襞は直江を熱く締めつけ、更なる行為をねだる。
「ああっ、あ……、なおっ……!」
「高耶さん……高耶……」
ひとつの肉となった二人の唇が紡ぐのは、互いの名前だけ。


やがて、悲鳴のように甘く男の名を叫んで、高耶が果てた。
突き上げられた顎、パンパンに撓り帰った幹から迸るしろい蜜。ビクビクと痙攣する内腿、開かれた口端から滴る銀の糸──
「高耶さんっ……!」
少し遅れて、直江も高耶の内部に欲望をぶちまける。
「あ──」
自分の襞が、断続的な放出とともに直江を痙攣するように締め付けている──やがて、奥深く穿たれた楔から、熱いものが吹き出すのをリアルに感じて、解放の余韻に宙を彷徨っていた高耶の深紅の瞳が、ふいに見開かれた。

己の魂すべてを注ぎこもうとするかのように、直江は高耶のいちばん深い処へ放つと、自らの白濁に濡れた自身を引きずり出す。
果てた直後、収縮する秘所に異物を受け入れたままでいるのは苦痛だったが、それでも高耶の唇からは喪失感からか、堪え切れない吐息が溢れた。
高耶は欲望に濡れた瞳をもはや隠しもせず、自らテーブルに上半身を起こすと、濡れた瞳で直江を見た。


壮絶に、男を誘う深紅の瞳。
「高耶さん……今夜はあなたを、壊してしまうかもしれない」
ごくりと息を飲み、低く囁く男に、高耶は微笑った。
「壊せよ──直江。オレを」
──壊せるのはお前だけ。

再び、重なりあい、一つになる二人の影を、短くなっていくキャンドルの灯がいつまでも照らし続けていた。





翌朝早朝。ベッドからそっと抜け出そうとした細い手首を、まだ眠っているとばかり思っていた直江が掴んだ。
「高耶さん……」
だが、男の真摯なその声にも、高耶は無言で首を振る。
直江を見つめるその深紅の瞳は、昨夜快楽に溺れたあの瞳ではなく、直江が焦がれる儚く強い彼、そのものだ。
胸を突かれて、直江はそれ以上、彼を止めることはできなかった。
おそらく直江が高耶を求める以上に、高耶は直江を求めているだろう。
それでも、高耶はその思いを殺してメイド服に身を包んだ。
屋敷の外で短く、クラクションが鳴る。



扉によりかかって、直江は高耶を見守った。
正門に横づけされたリムジンの前で、あの長髪の男が立っている。
挨拶をして出て行こうとする体を、直江はふいに掴んで強引に引き寄せ、きつく抱きしめるとその耳元に囁いた。
「オウギタカヤ──俺はあなたを諦めませんよ」
必ず、うんと云わせてみせますよ。
真摯な囁きに、一瞬、深紅の瞳が揺らぐのを直江は確かに見た。

直江は微笑み、その額に口づけながら、
「それでは、また今夜五時に。……お待ちしていますよ、高耶さん」
高耶は頷いて、振り返らずに去って行った。



恭しく開かれるリムジンのドア。長髪の男が頭を下げる。
「──お疲れ様でした」
「ああ」
高耶は一言答えると、長い情事でけだるい体をシートに沈ませ、静かに目を閉じた。





屋敷を後にし、走り去って行くリムジンを、直江は見えなくなるまで見守った。

オウギタカヤ──俺だけの専属メイド。
あなたを……手に入れて見せますよ。

END.



こんにちは。このところ、椎名が「書けない」とか愚図ってるので、変わりに出てきました、甘甘イロモノ書きのmilky417ですv(馬鹿;)

よくありがちな「オレはお前と対等でいたいんだ」と云う台詞を高耶さんに云わせたかっただけなんですが、そんなの普通のシリアスでやれよ、オレ…;何もメイドでやるこたないだろー(T_T)

ええと、高耶さんがなんとなく誘い受風味ですv(え、こんなん誘い受じゃない?;)
誘い受は書くのが苦手でして(笑;特に女々しくなったら嫌なんで、高耶さんの年令を二十歳前後にして、台詞もできるだけ女々しくならないように気をつけたつもり…なんですけど;でもメイドじゃん;;(ーー;)
この二人のお初の時の様子を書いた「メイド高耶水揚げ編」と、直江が夢見た来るべき「メイド高耶身請け編」は…機会があれば、またいつの日か(^-^;)

以外にも直江がマトモ(笑)な掟破りの「メイド高耶シリアス編」、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
それではお読み下さった方、どうもありがとうございましたv