MAIDBY 417
ある日の午後の昼下がり。コーヒーを運ぶ細い体が小刻みに震えていた。
昼食後、飲むように強いられた何かの錠剤のせいだろうか?先ほどから体が火照り、すっかり息があがってしまっている。
直江が待つ書斎は、二階の通路を左に曲がったつきあたりにある。今の自分のこの状態で階段を昇れば、どうなるかは目に見えていたが、高耶に選択肢はなかった。
仰木高耶は、屋敷の主、直江信綱に仕える「メイド」と云う名の奴隷。
よほどの事情があったのだろう、月に一度、闇市で開かれる奴隷オークションの壇上に自ら上がった高耶を、偶然、客として招待されていた直江が買ったあの日から、一週間。
屋敷に来た夜、はじめての体を奪われてから、性に疎い体は、夜毎、直江の手管で好みの奴隷に躾られつつある。白い襟のついた清楚だが、丈の短い紺色のメイド服の下、高耶は敏感な箇所を戒めるハーネスと、ストッキングを吊るすガーター以外、一切下着を身につけていない。
直江に「あなたにそんなものは必要ない」と命令されているからだ。カップを乗せたトレイを手に、階段を昇る度、ハーネスに繋がれたリングがきつく根元を戒め、痛いほど張り詰めた敏感な先端に服の裏地が擦れて、細い体を責め苛む。
何より敏感な秘所にびっちりと埋め込まれた、アナルプラグがその存在を主張して、高耶は声を殺すのが精一杯だった。
体の中心から沸き上がる疼きを必死に堪えながら、震える体でようやく階段を昇り切り、長い通路を抜けて、男の待つ書斎に辿り着く。ドアをノックし、デスクのノートパソコンに向かう直江の傍らに立つと、掠れた声で高耶は云った。
「コーヒーを……お持ちしました……」
トレイからカップソーサーを持ち上げる手が、カタカタと震えている。高耶は必死の思いで、それをデスクの端に置いた。
「……ありがとう」
ディスプレイから顔を上げ、男が微笑った。高耶はぎこちない笑を返して、ギクシャクと頭を下げ、すぐにその場を去ろうとしたが、それで許されるはずもなかった。細い手首を捕まれて、なす術なく立ち尽くす高耶。
男は意地悪そうな笑を浮かべると、
「どうしたの?そんなに慌てて……まるで一分でも早く俺の前から逃げたいって云っているように見えますよ」
「ちっ、ちが……、」
反論しかけて、慌てて口を噤む。口答えをすれば、何をされるかわからない。元より、この屋敷に来た日から、自分にはそんな権利はないのだと、高耶は自分に云い聞かせ、俯いた。直江はそんな高耶を楽し気に見つめて云った。
「高耶さん……震えていますね」
力なく首を振る高耶を、なおも男は言葉で責める。
「今、どんな感じなのか云ってごらんなさい?」
高耶は真っ赤になったが、俯いたまま、消え入りそうな声で云った。
「……スカー…トが……擦れて……つらい……です……」
「そう、つらいんですね──可哀相に。でもこれは、高耶さんをもっと感じやすくする為と、少し我慢を覚えてもらう為でもあるんですよ。あなたはいつも、ちょっとぼうやを弄ってあげただけでも、すぐにイってしまうでしょう?」
クスクスと直江が微笑って、
「今、あなたがどうなっているか、見せて?」
「……はい……、」
高耶は唇を噛みしめ、羞恥に染まる頬を背けるようにして、おずおずと自らスカートの裾を捲りあげた。きつくリングが食い込んで、すっかり色の変わってしまった若い楔が痛々しい。
それでも、張りつめた鈴口に、堪え切れずにしみ出した蜜が滲んでいる様は、とても淫らだった。
「随分、きつく食い込んでいますね……痛い?」わかりきったことを聞く男に、高耶は震えながらも頷く。
「こんなに締めつけられているのに、いやらしい蜜を零して。……このぼうやをどうしてほしいの?」
「…………出……したい…です……」
羞恥のあまり、気が遠くなりながらも、高耶は震える声で答えた。聞かれたことにはどんなことでも正直に答えるよう、毎晩、きつくその身に躾けられている。
少しでも躊躇ったり、答えずにいれば、後で容赦なく責められることを、僅か一週間のこの生活で、高耶はその身に嫌と云うほど思い知らされていた。「出したい時には、どうするんでしたか?」
「……はい……、なおえ…を、先に……イかせてから……なおえに……出させて…もらいます……」
その答えに満足したのか、男は微笑んだ。
「それじゃ、そうしてごらんなさい?」
高耶は観念したように、椅子に腰掛けている直江の元に跪き、ジッパーを下ろして中のモノを取り出すと、躊躇いを振り切るように口に含んで奉仕をはじめた。
レースのカチューシャをつけた頭が、男の股間で揺れている。
直江は片手をテーブルにつき、もう片手で高耶のサラサラの黒髪を撫でながら、高耶が必死に奉仕するさまを満足気に見つめている。調教をはじめて間もない為、決して上手いとは云えないが、拙い舌使いが、かえって男の欲情をそそる。
「高耶さん──顔をあげて、俺の目を見ながらしてごらんなさい?」
すると高耶はおずおずと顔を上げ、云われた通りにした。
口いっぱいに男を頬張り、自分を支配する男の鳶色の瞳を見あげながら、高耶は必死に奉仕する。唇を窄め、吸い上げるように前後させると、直江が微笑った。
「いいですよ……随分、上手になりましたね──高耶さんはいい子だから、ご褒美をあげましょうね」
直江は高耶の中に埋め込んだ、プラグのリモコンスイッチをONにした。「………ッ!」
突然、体内の異物が動きだし、高耶が目を見開いた。咄嗟に歯を立ててしまいそうになるのを懸命に堪える。勃ちあがったままで射精の許されない前の痛みと、後ろを犯す淫具の刺激に耐えながら、高耶はなおも必死で奉仕を続けた。
ふいに頭をグッと押し付けられたかと思うと、男の放った白濁が熱い奔流となって一気に喉奥に流れ込んできた。男のものを飲まされるのは、これで何度目だろうか。
もし、飲み切れずに零したりすれば、また、どんなお仕置きをされるかわからない。
高耶は苦いそれを、必死に吸い上げ、飲み干した。
ようやくすべてを嚥下して、高耶が顔をあげると、男が子供を諭すように云った。
「アーンしてごらんなさい?」
云われた通り、おずおずと口を開いた高耶が、己の白濁をきちんと嚥下したことを確かめて、男は満足気に笑った。
「──上手に飲めましたね。いい子ですね。おいしかった?」
「は、い……あ…りがとう……ございます……」
震える声で高耶が答える。まだ、体内の淫具のスイッチは入れられたままだ。
「もっと、ご褒美がほしい?」
「……ほ、しい、です……」
男はクスクス笑いながら、自分の膝を指差した。
「高耶さんは淫乱ですね。じゃあ、ココに来て、ご褒美がほしいところがよく見えるようにしてごらんなさい?」
云われるまま、高耶は震える脚を叱咤しつつ、向かい合う形で椅子に腰掛けた男の膝を跨ぐと、立ったままのろのろとスカートを捲りあげた。
男の目の前で、自らスカートの裾を捲りあげ、恥ずかしい部分を曝す高耶。
直江は徐に食い込んだリングを外してやり、ゆるゆると扱いてやった。
「アア……ッ、」
長時間拘束されていたソレをなだめるように擦り上げられ、痛みと快楽がないまぜになって、高耶が堪え切れずに声をあげ、背を仰け反らせる。
「そんなに気持ちいい?高耶さん」
揶揄るような男の問いかけにも、もはや高耶には答える余裕もない。
「やっ、……もっ、……!」
あまりにあっけなく、か細い悲鳴をあげて高耶は男のてのひらに放った。
自らのスカートの裾を持ったまま、男の手でしてもらい、イかせてもらうと云う、羞恥この上ない行為。
それでも、奴隷なのだから、主人に何かしてもらった時は、礼を云わなければならない。
まだ後ろの玩具が動き続けている為、体も声もガクガクと震えてしまうのを必死に堪えながら、高耶は掠れた声で云った。
「あ……、ありがとう……ございました……」
「いっぱい出しましたね。そんなに気持ちよかったの?」
男に揶揄るように云われて、高耶は真っ赤になって俯く。
「あなたがたくさん出したから、手がべとべとになってしまいましたよ?」
「す……すみませ……」
「綺麗にして下さいね」
命じられて、高耶は震えながら跪くと、男の手を取り、自ら放ったしろいものに塗れた男の指に、おずおずと舌を這わせた。「あなたのは甘いでしょう」
紅い舌がしろいものを舐め取る様を、男は満足気に見つめる。やがて、すべてが拭われると、直江は今度は高耶に後ろを向いて腰を突き出すように命じた。
「昨日の夜、中にあげたものを零していないか、チェックしてあげる」高耶はのろのろと後ろを向き、云われた通り、おずおずと男に向かって腰を差し出した。
直江が露になった形のいい双丘を割り開き、狭間に淫らに食い込むハーネスを指先で辿ると、体内で暴れているプラグの振動を確かに感じる。
「どうやら、零してはいないようですね」
男はわざとらしく声に出して云うと、細い腰を抱きよせ、己の膝に横抱きに座らせた。
その動きのせいで、体内のプラグに真下から突き上げられる形になり、高耶が声にならないうめきを洩す。
「クッ……」
直江は必死に体内からの刺激に耐える高耶の端正な横顔を熱い瞳で見つめながら、はじめて高耶と会った、あの奴隷オークションのことを思い出していた。
少しでもいい値がつくようにと、着飾った奴隷志願達の中、たった一人、白いシャツにジーンズと云ったごく普通のいでたちで、思いつめた表情で、いやらしい言葉や視線を投げかける客達をきつく見返していたあの時の高耶を、直江は忘れない。
奴隷を買う気などまるでなかったが、直江は気がつけばVIP席を出て、彼の前に立っていた。「──あなたは私の為に、何でもする覚悟がありますか?」
問いかけに、一瞬目を伏せ、やがて意を決したように、まっすぐに自分を見据え、
「……金をくれるなら。オレはあんたでも、……誰にでも従う」
きっぱりと、そう答えた高耶。後に、貧しい上、病に倒れた妹を抱え、思いつめた末の行動だったと高耶自身の口から知ったが、そんなことは直江には、もはやどうでもいいことだった。
(このひとは俺のものだ)
そう思うと目眩がする。
「……高耶さん」
名前を呼ぶと、潤んだ瞳でおずおずと見つめてくる高耶がいとおしく、直江は高耶の後頭部を押さえると、こちらに引き寄せ、柔らかな唇に自らの唇を重ねた。
「ン……ッ」
深くきつく、舌を差し入れると、くちづけは微かに精液の味がした。己と、高耶自身の白濁の余韻の残る淫らなキス。ようやく唇を離すと、すっかり息があがってしまった高耶が泣きそうな表情で見つめてきた。昼に飲ませた催淫剤と、体内の玩具に責められ、もはや限界なのだろう。
「高耶さん……どうしてほしい?」
わかっているくせに、高耶自身の口から自分が欲しいと云わせたくて、直江は熱く囁いた。
高耶は一瞬、今にも泣き出しそうな顔をしたが、すぐに消え入りそうな声で、必死に言葉を紡いだ。「……なおえ…の……っ、入れ……我慢……できな……」
互いに一度放ったとはいえ、すでに二人のソレは再び頭をもたげ、痛いほど張り詰めている。
「……いい子ですね……高耶さん。望みどおり、ご褒美をあげますよ」
再び、デスクに手をついて立たせた高耶の腰から、ハーネスと、昨夜の残滓に濡れたプラグが荒々しく外される。
高耶がひいっと声をあげるのも束の間、含むものを失くして震える蕾に熱いきっ先が押し当てられ、背後からずぶずぶと突き入れられて、メイド服の背が大きく撓った。「──ッ!」
項から首筋に、きつく口づけながら、太いものを奥まで受け入れさせられ、声もない高耶の繋がったままの腰を、直江は強く揺すっては、深々と突き上げる。
何度欲望を突き立てても、処女のようにきゅうきゅうと締めつけてくる熱い襞。
きつい抜き差しを繰り返しながら、このひとの中で溶けてしまいそうだと男は思った。
「ああっ……ア!……ン……あ……」
「高耶さん──」
己の動きにあわせて、ひっきりなしに声をあげる淫らな人形と化した高耶を、もっともっと貪りたい……激情にかられ、激しく腰を打ちつける男の腕の中で、高耶はなす術なく揺さぶられ続ける。
やがて、耐えられなくなったのか、おずおずと細い手が自らの前に伸びるのを、直江は許さなかった。「駄目ですよ……云ったでしょう?俺の許しなく、ぼうやに触れてはいけないと」
泣きながら嫌々をする高耶に、後でお仕置きをしないとねと、クスクス笑いながら、男は耳朶に囁いた。
「……ココ、触ってほしいの?」
恥ずかしい問いかけにも、素直にコクコクと頷く高耶がいとおしくて。
直江は深々と繋がったまま、背後からまわした自らの手で、高耶の楔を扱いてやりながら、その耳元に囁いた。
「高耶さん……一緒にイきましょうね……」
(愛していますよ)
その言葉を心の中で囁いて、黒髪に口づけながら、直江は高耶の中に、高耶は直江の掌の中に、熱い白濁をブチまけた。
直江がぴくぴくと痙攣するように収縮を繰り返す襞から、徐に萎えたソレを引き出すと、高耶の唇から切ない吐息が溢れた。昼間、与えた催淫剤は、かなり強いものだったから、到底、一度抱かれたぐらいではすまないはずだが、直江は己の後始末を高耶の口でさせると、若いの根元を再びリングで戒め、後ろに無造作にプラグを押し込んで、すっかり乱れてしまったメイド服の襟を整えてやった。
そうして、徐に先ほど高耶が運んできたコーヒーを口元に運ぶと、一口含み、すぐにデスクに置いてにっこりと笑った。
「……すみませんが、冷めてしまったので、もう一度、煎れなおしてきて下さいますか?」行為の直後で覚束ないのか、ふらつきながらも、必死に冷めたカップを乗せたトレイを抱え、出て行く背が愛おしい。
あのひとが戻ってきたら、もう一度、抱いてあげよう。
許しなく、ぼうやに触れようとしたお仕置きもしてあげなくては。
男は笑を浮かべ、再びノートパソコンのディスプレイに視線を向けた。
END.
秋田様にリクをお願いして書かせて頂いたものです。
旧地下にあった時はもっと軽いノリのつもりで書いていたんですけど(だってメイドだし/爆;)修正してるうちに、なんかシリアスっぽくなっちゃいました(笑;
秋田様、遅くなった上に(本当に遅すぎですみません><;)こんな話を押し付けられてご迷惑でしょうが;勝手に捧げさせて頂きます;読んで下さった方、どうもありがとうございました(逃げ!><;