フ×ディ復活記念(笑)
A Nightmare on Matumoto Street
ACT-4
by 417
高耶は、ゆっくりとこちらに向き直った。
目の前に佇む男の、薄いフレームの眼鏡の奥から見つめる黒い双眸と、片目を包帯で覆った高耶の不自由な視線が一瞬、かち合う。
その瞬間、高耶の体はその場に呪縛されたように凍りついた。虚ろな右目に、ゆっくりと歩み寄る男の姿が映る。
哀れな獲物は、本人すら気づかぬうちに夢魔のつくりだす白昼夢に落ちていた。
***
高耶は、ゆっくりとこちらに向き直った。
「仰木高耶さんですね。おはようございます。体調の方はいかがですか?」
白衣の男は微笑んだ。
「今日からあなたの新しい主治医になりました。開崎です。どうぞよろしく」開崎と名乗った男は、かなりの長身だった。
年は二十代後半だろうか?丁寧に後ろへ梳かし付けた黒髪、眼鏡の奥の吊りあがった切れ長の目元が、少し神経質そうな印象を与えるが、いかにも有能な医師、と云った風情である。
「……よろしくお願いします」
軽く頭を下げ、そう答えたものの、高耶の挨拶は気のないものだった。
この病室に隔離されて二年……正直なところ、主治医が変わろうが、今更、高耶にはどうでもよかった。
誰が主治医になろうと、自分を治せる医者など、この世にいないのだから。
この病院に収容された当初、高耶の元には、政府が密かに派遣した医師や研究者が多数訪れた。見るだけで相手を傷つける……そんな馬鹿げた病などあるものかと、半信半疑だった彼らは、高耶の病が現実だと知るや否や、目の色を変えた。未知のウィルスが原因ではないか、先天的な異常があったのではないか……君を治す為だから、協力してほしい。
来る日も来る日も、嫌というほど苦痛を伴う精密検査を繰り返され、散々モルモットのように扱われた結果、彼らの下した結論は、高耶は深紅に染まった左眼以外はまったくの健康体であり、病については結局「原因不明」というものだった。原因もわからず、何の治療法もなく、無論、この忌むべき左眼を治すことのできる人間などいない……物思いに沈む高耶をじっと見つめていた男は、ゆっくりと歩みよると、その名を呼んだ。
「……高耶さん」
その呼び方の、独特のイントネーションに、高耶は驚いたように男を見た。
「……ッ」
忘れていた……忘れようとしていた何かを、不意に目の前に突き付けられたような気がした。ゾクッとしたものが、背筋を走る。
それが、恐怖からではなく、かつて嫌というほどその身に教え込まれた官能を刺激されたからだと悟って、混乱した高耶は頭が真白になった。
開崎の黒い瞳が、自分を見つめている。
(高耶さん……)
かつて、こんな風に自分を呼ぶ者がいた。
思い出すのも憚られる、あの禁断の悪夢の中で、あの男は、いつも自分をそう呼んだ。……そういえば、いったい、いつからだったろう。
夢を見なくなったのは。
動揺した高耶は、男から視線を逸らすと自分にいいきかせるように首を振った。
気のせいだ。だいたい、そんなことがあるはずがない。
あれは……すべて夢の中の出来事だし、第一、あの男と開崎では、姿も声もまるで違うではないか。
だが、次の開崎の言葉は、更に高耶を混乱させた。「……久しぶりですね、あなたに会うのは……」
「なっ……」
絶句する高耶を見つめ、開崎は呟くように、
「俺がこの二年、どんなにあなたに会いたかったか……あなただけを思っていたか、あなたにはわからないでしょうね……」
「何、云……ッ」
間合いを詰められ、思わず本能的に後退った高耶を、開崎はゆっくりと壁際まで追いつめた。もとより、閉ざされたこの病室内では、高耶には逃れる場所などない。
差し出した掌で、滑らかな頬に触れると、細い体の震えが手に取るように伝わって、男は思わず目を細めた。
「怖がらないで……」
怯える子供を諭すように、甘く囁いて、その場に呪縛されてしまったかのように動けずにいる高耶の首筋を、開崎は徐に撫で上げた。
その途端、細い体がビクンと跳ねる。
「や、め……ッ、」
ありえない現実に、からからに乾いた唇から、高耶は掠れた声を絞り出すのが精一杯だった。
「黙って……」
かつて男が夜毎、自ら仕込んだ体だ。
どうしてやればこの体に火がつき、泣き出すかなんて知っている。
子供のように震えている高耶の治療着のボタンに、男は悠々と手をかける。
一つ一つ、殊更時間をかけてすべてのボタンが外してやると、男は徐に胸元に手を差し入れて、大きく襟をはだけさせた。
薄い胸が露になる……その胸が、激しく上下しているのを見て、男は微笑むとその首筋に徐に顔を埋めた。「……ッ!」
思わず身を震わせ、顎を仰のかせる高耶の首筋から胸に、唇を這わせ、紅い痕を散らしながら、男は囁く。
「よく、こうしてあなたを抱いた……覚えているでしょう?」
高耶は違うというように力なく、だが、必死に首を振る。
「う、そだ……オレはお前なんて知らな……」
「おぼえてるくせに」
男は、胸の飾りの片方に、軽く歯を立てた。
甘い痛みは、官能をより刺激する淫らな炎となって高耶の全身を駆け巡った。流されまいと、高耶は必死に逃れようと弱々しく身を捩る。「やっ……めろ……ッ!お、まえ……ッ、いったい……」
「俺が誰かなんて、あなたにはもう、とっくにわかっているはずですよ」
「知……らな……ッ、アッ……!」
不意に開崎が白衣の下、熱くなったモノを高耶の股間にグッと押しつけてきたので、思わず高耶は真赤になった顔を逸らせた。
「ほら……あなただって、もう、ぼうやをこんなに熱くしてるくせに。忘れたとは、云わせませんよ……」
指摘された高耶が、羞恥と屈辱のあまり涙を零すと、開崎はその涙を自らの唇で吸いとって囁いた。「泣かないで……いいんですよ。あなたはそういう体をしているんですから……ああ……あなたは、俺にこうされるのが大好きでしたね……」
徐に眼鏡を外し、白衣の胸ポケットにそれを仕舞うと、開崎は片方の指を嫌がる唇に含ませて濡らし、壁に押しつけるようにして立たせた高耶の前に跪くと、下着に手をかけ、取り出した若い楔を躊躇うことなく口に含んだ。「ヒッ……や……!」
そうしておいて、たった今、高耶自身の唾液で濡らした指を、後ろに這わせ、双丘の狭間に差し入れた。
久しぶりに異物でそこを割られる痛みに、高耶は掠れた悲鳴をあげる。
二年ぶりの体は、容易に異物を受け入れなかったが、開崎はだましだまし指を進め、ついに根元まで飲み込ませた。「ヒ……ッ!」
前を唇で深く愛され、後ろを長い指で奥まで出し入れされて高耶はなんとか男を引き離そうと弱々しくもがいたが、そうする度に殊更きつく前を吸われ、後ろに深深と指を突きたてられ、逃れることはできなかった。
開崎の口内で、高耶の楔はすぐに先走りの透明な蜜を零しはじめる。
男は、埋め込んだ指先で熱い襞を掻き回し、撓る幹を上下にきつく吸い上げては、先端の窪みからと止めど無く零れる蜜を尖らせた舌先で掬うように舐め取った。
「……はなせ……も、……」
立ったまま、前後を思うまま責め立てられて、細く引き締まった内腿が射精への欲求で痙攣したようにピクピクと震える。「駄目、だ、……なおっ……」
高耶本人すら無意識に、あの男の名前を口走ったその瞬間。
微笑む男の口内で、堪えきれずに高耶が弾けた。
「アーッ……」
自分だけに許された蜜を一滴残らず零すまいと、男は吐き出されるそのすべてをきつく吸い上げ、飲み干す。
細くはない指を根元まで含んだ襞が、放出に合わせてきゅうきゅうと収縮する。
どんな極上の悪夢よりも甘美な蜜を自らの舌でたっぷりと味わって、ようやく男が顔を上げた時、その顔はもはや開崎ではなかった。
高耶はひいっと声にならない悲鳴をあげる。色素のやや薄い髪、鳶色の瞳……それは紛れも無く、かつて高耶を夜毎、夢の中で組み敷き、犯したあの男だった。「ヒッ……」
声を無くして震えている高耶に、男は徐に立ちあがるとその顎を掴んで覗き込み、うっとりと囁いた。
「いい子ですね。高耶さん……イク時は必ず俺の名前を呼ぶように。そう、教えてあげたのを、この体はちゃんと覚えていましたね……」
男が耳朶に囁く。
「可愛いですよ……あなたの蜜は、どんな悪夢よりも甘い……」
鳶色の瞳が、触れそうなほど目の前で、この世のものではないようにあやしく輝く。もう、逃げられない……!高耶は思わず悲鳴をあげた。
「うわああああーッ!」
***
「うわああああーッ!」「君ッ……君!しっかりしなさい」
気がつくと、高耶は誰かにもがく体を押さえつけられているところだった。
自分を押さえつけている相手が開崎と知るや否や、高耶は尚も悲鳴をあげてその手を振り払って逃れようとした。
「うわあああっ!オレに触るなあっ!」
高耶が叫んだ瞬間、不意にドアが開いて、異変を聞きつけた若い屈強な男の看護士が二人、病室内に駆け込んでくる。
「先生、どうしました!」
その一瞬の隙に、高耶は開崎の手をすり抜けて壁際に逃れた。こうした病棟では、パニックを起こした患者が暴れて医師に危害をくわえるなどは、日常茶飯事である。
特に高耶の病がどれほど危険か知っている看護士らは、病室の隅で怯えたように蹲る高耶を見るや否や、布製の拘束ベルトを取り出し、力づくで抑え込みにかかった。
開崎は、慌てて彼らの前に立ちはだかると、制するように、
「なんでもないんですよ……君、落ちつきなさい。大丈夫だから、落ちついて……」両手をあげ、大丈夫だからと必死に諭す開崎に、病室の隅で怯えきっていた高耶は、ようやく顔を上げた。
まじまじと開崎を見たが、どこをどう見ても、あの男の面影など何処にもない。
自分の体を見まわしても、脱がされたはずの治療着も乱れてはいなかったし、体もなんともないようだった。……だとしたら、今のはいったい何だったんだ?
夢、だったのか……?
ずっと忘れていた……忘れたはずだったのに……あの淫夢がまたはじまったのか……?
力無く蹲る高耶に、開崎はゆっくりと近づくと、そっとその肩に手をかけた。
ビクン、と細い体が震えたが、高耶は今度はその手を払いはしなかった。
開崎は微笑を投げかけて、
「どうやら落ちついたようですね……よかった。慣れない医者が急にやってきたから、驚かせてしまったのかもしれませんね。すみませんでした。大丈夫ですか?」
違うと云いたかったが、高耶には言葉もない。
開崎は、背後で身構えている看護士らに「もう大丈夫だから下がるように」と目で合図すと、高耶を立たせてベッドに坐らせた。
看護士達が出ていき、二人きりになっても、まだ高耶の体は小刻みに震えていた。
初対面で、しかもこれから主治医となる医師の前で醜態を晒してしまった上、その医師を相手に白昼、淫夢を見てしまった羞恥と混乱から、マトモに開崎の顔を見ることもできない。開崎は、病室の隅にあるトイレと洗面台とシャワーだけの簡易バスルームから紙コップに水を汲み、その水に白衣のポケットから取り出した何かの粉末を密かに混ぜると、再び高耶に近づいた。
「大丈夫ですか?」
答えない高耶に、開崎は水の入った紙コップを差し出した。
「ただの水ですが、少しでも飲むといい。落ちつきますよ」
暖かな言葉に、最初躊躇ったものの、高耶はおずおずとそれを受け取ると云われた通り、一口、口に含み……自分でも驚くほど喉が乾いていたらしく、あっという間にすべて飲み干してしまった。開崎は微笑しながら、その様子を見ている。
もっと飲みますか?と聞くと、高耶は黙って首を振った。
「……もう、大丈夫ですね?」
念を押す開崎に、高耶は力無く頷いた。
「何かあったら遠慮なくコールを押して、私を呼んで下さい。できる限り、力になりたいと考えています。ではまた午後に往診に来ますから……」そうして、開崎が出ていくと高耶はベッドに倒れ込んだ。
また、あの悪夢がはじまったのだと思うと、恐ろしくてたまらなかった。
だが、こんなこと、誰にも云えない。
ふいに瞼が重くなった。突然、襲ってくる猛烈な眠気。
眠ってはいけない……必死に自分に云い聞かせるが、凄まじい眠気には抗えなかった。
駄目だ……眠ったらまた……あの男が……
(誰か……助け……)
絶望の中で、高耶は深い眠りに落ちていく。
その瞼がピクピクと震える。
二年ぶりに、レム睡眠に入った証だった。
***
ドアに取り付けられた覗き窓から、高耶が眠りに落ちる様子を伺っていた男は、うっとりと微笑んだ。
まだ、先ほど味わったばかりの高耶の蜜の余韻が口内に残っている。その指には、きつく締めつけてきた熱い襞の感触も生々しく残っていた。(さっきはいいところで終わりになってしまいましたが……続きは、午後にしましょうね)
そう……慌てることはない。時間はいくらでもある。
これから、あなたにうんといい夢を見せてあげる。
最後の最後にこの世界であなたが壊れてしまったら、その時は俺の住む夢の世界に連れていってあげますからね。午後まで、少し、夢を見ているといい。
いとしいあなたに、どんな夢を見せてあげましょうか……
To Be Continued...
ACT‐4です。
中身が直江とはいえ、私はやっぱり開崎の体では本番させたくないもんで(殴打)、まずは手始めにお口と指でご奉仕させてみました(^^;)とはいえ、高耶さんがイった直後には、いつのまにか義明になってましたけど…(笑)
高耶さんの後ろもしろいのも、ゴチになれるのは橘直江だけですの(きっぱりv)……Nファン417の怨念でせうか(笑;ちゃんと、イク時にひらがなで「なおっ……!」と叫ぶことのできたよいこな高耶さんには、それなりのご褒美をあげないといけません。(もちろん、悪い子だった時には、それなりのお仕置きを…にやv)
ということで次回、いよいよアレが出ますv 別に焦らしてるわけぢゃないんですが、今度こそ出ます。触手を書くのはCODE:Naotaka以来久しぶりなので(笑)キアイ入れて書きますにょろ。お楽しみにですにょろv(殴打
読んで下さってありがとうございましたv