HIDOI 前夜 4

作・椎名




次の瞬間、いきなり強い力でベッドに押し倒されて、高耶が目を見開いた。
驚いて起き上がろうとする間もなく、容赦なくのしかかられて、首筋に噛みつくように口づけられる。ヒッと首を竦めた高耶が思わず男の名を叫び、逃れようとすると、男はその体を抑え込んで、叱咤するように囁いた。
「あなたは俺に買われた身なんですよ?代金はもう支払済ですし、あなたはご自分の意志で契約書にサインをした。絶対服従……そう、誓ったはずでしょう?今更、嫌とはいわせませんよ」

その言葉に、高耶の顔色が変わった。
抵抗できなくなった体から、男は悠々とローブを引き剥いだ。直ぐに、まだ少年の面影を残したしなやかな肢体が露になる。
思わず、男の口から感嘆の吐息が漏れた。
「綺麗ですね、あなたは……」
高耶は羞恥のあまり、真っ赤になって顔を背ける。

「プレゼントをあげますよ、高耶さん。この綺麗な肌にきっと似合う」
男は酷薄な笑を浮かべると、あらかじめベッドの支柱に取り付けておいた黒い皮製の手枷を取り上げ、高耶の右手首に有無をいわせず嵌め込んだ。
「とってもよくお似合いですよ」
枷で拘束された手の甲に口づけながら笑う。
「さあ、もう片手にもあげましょうね」
「直江さんっ!」
自由を奪われる恐怖に、怯えた高耶が思わず男の名を叫んだが、無論、高耶には拒否する術はない。もう片手にも容赦なく枷を填められ、高耶は磔のような形で、全裸でベッドに拘束されてしまった。


激しく上下する薄い胸。
身を隠そうと寄せられる両脚の間に強引に体を入れ、閉じられないようにしてから、唇まで青ざめ、今にも泣き出しそうに怯えるその顔を、男はうっとりと見下す。
「直江さんっ……、」
男の名を呼ぶ声が震えている。
「直江で構いませんよ。直江と呼んで下さい。ああ、こんなに震えて……そんなに怖がらないで。あなたは処女だから、最初は痛いかもしれないけど、すぐに馴れる」
クスクスと男は笑い、高耶の為と云うより自分が入りやすくする為に、サイドテーブルの引き出しから潤滑ゼリーの入った瓶を取り上げ、掌にたっぷりと取った。
そのままその手を高耶の背後に回し、ゼリーで濡れた指先で双丘の狭間を辿る。

「やあっ、」
信じられない箇所に他人の指で触れられて、高耶が掠れた悲鳴を上げた。
「やめっ、やだっ、あああっ!」
「暴れないで」
男は叱咤しつつ、暴れる腰を押さえ付け、指先を固く閉じた秘所に潜り込ませた。
「やだ──痛いっ、ウアアッ!」
生まれてはじめて異物で体を割られて、高耶が背を仰け反らせる。潤滑ゼリーの助けを借りて、男の指はズブズブと根元まで沈んだ。

「痛いッ、やだっ、やめ……っ!」
埋め込まれた指を出し入れされて、其処から沸き上がる痛みと異様な感覚。恐怖に竦み上がっている体は、快感など取り込めるはずもない。
だが、行為を急ぐ男は、高耶の苦痛に構わず、強引にもう一本指を飲み込ませた。
高耶が悲鳴をあげて制止を求める。
「やめっ、痛い!やだっ!助け…!」
「暴れるからよけいに痛いんですよ。じっとして、力を抜いて」
男は容赦なく無理矢理飲み込ませた二本の指で、狭い襞を蹂躙する。
「ああっ……やめ……」
体内で生き物のように蠢く男の指。引き裂かれる苦痛に高耶は啜り泣いた。

高耶の襞にたっぷりと潤滑ゼリーを塗り込めると、男は指を引き抜き、自らもローブを脱ぎ捨てた。自分とは比べ物にならない、大きく勃ちあがった成人男性のモノを認めて、高耶の顔が恐怖に歪む。
男は高耶の両膝裏を掬い上げると、胸につくほど折り曲げさせた。
「やだっ、やめっ、」
「力を抜いて」
熱く脈打つモノの先端をグッと押し付けられて、高耶は眦が切れそうなほど、両目を見開いた。
「やだっ、入れるなあっ!」
男が腰を入れ、潤滑ゼリーでぬめる秘所に先端が食い込んだ。
「や──!」
そのまま圧倒的な容量で柔襞を引き裂き、押し入ってくる。
「ウアアアアーーーーッ!」
絶叫とともに、細い体が激しく仰け反った。
これまで体験したことのない、驚くほど狭い感触が男を包んでいる。
あまりの締め付けに男も苦痛を感じて、思わず低い呻きを洩す。同性を抱くのは高耶がはじめてだったが、これまで体験したことのない凄まじい快楽に、男は淫らな舌舐めずりをして、尚も強引に侵入を図った。

「アアアアア───ッ!!」
高耶の喉をついて出る悲鳴は止まらない。
男が掴んだ細腰を揺する度、めり、めりと熱い凶器が高耶の襞を引き裂いて沈んで行く。
ようやく最奥まで繋がって、男が満足気に吐息を洩したが、あまりの苦痛で高耶の体は小刻みに痙攣していた。
「いたい…っ、いたい……」
「……かわいそうに」
男は薄く笑って、グッと体を倒すと唇で涙を吸い取ってやった。
そして、言葉と裏腹に、高耶を気づかうそぶりも見せず、好き勝手に動きはじめた。
「ひいっ!」
激痛のあまり、仰け反る体。高耶は両方の手枷を繋ぐ鎖をきつく握りしめ、唯一自由になる首を振って、必死に堪える。
男のモノが出入りする度、無理な行為で裂けてしまった秘所からは鮮血が滲み、潤滑ゼリーと混ざり合ってくちゅくちゅと云う淫らな音を立てた。

散々、快楽を貪って、ようやく男が高耶の中で到達した。熱いものが自分の奥深くに注がれるのを感じて、高耶の目から新たな涙が零れ落ちた。
男はすべてを出し切ってしまうと、あっさりと自らを引き抜き、高耶の両膝裏を押さえて思いきり開かせ、たった今、自分が陵辱した箇所を満足気に見つめた。
高耶の秘所は含むものを失い、まるで行為を惜しむかのようにヒクヒクと動いている。傷ついた其処からは、男の精液と高耶の流した血液が混ざりあい、糸を引いて滴った。



男は高耶の右手首の枷を外してやると、その手を掴んで彼自身の秘所に持って行き、親指の腹で秘所から溢れる体液を拭わせた。
傷ついた箇所に自分の指先が触れ、高耶は痛みと羞恥に顔を歪ませる。
意図がわからず怯える高耶に、男はベッドサイドに投げ出してあった白紙委任状を取りあげ、「捺印がまだだったでしょう?」と笑って『仰木高耶』と云う署名の横に、その親指をグッと押し付けた。

男の所有の証の精液と、高耶の破瓜の紅で押捺されて、白紙委任状は完成した。
「これで契約は完全に成立です。あなたはもう、あなたのものじゃない。俺のものだ」

男は笑って、再び高耶を組み敷いた。
「やっ、もうっ、やめ……ッ、」
再び犯される、という恐怖で弱々しく抵抗する体を、男はなんなく押え付けると、叱咤するように云った。
「駄目ですよ、あなたは俺に逆らえないんですよ。死ぬまでね……」
尚ももがき、少しでも押し退けようとする右手を、男は「いけない手だ」と云って、再び枷で容赦なく拘束した。
そして、自由を奪った上で、おもむろに二本の指を揃えて高耶の秘所に潜り込ませた。

「アアッ!」
散々蹂躙された箇所に、再び異物を突き入れられて、苦痛の悲鳴が上がる。男の精液と血でぬるぬるになった其処は、高耶の意志とは裏腹にあっさり指を受け入れた。
「痛い……抜い…て……、」
男はクスクスと笑う。
「すごい締めつけだ。あなたの此処は、本当に使い心地がいい。いい買い物をしましたよ。大丈夫、心配しないで。今度はあなたもうんとヨクしてあげるから……」
「やっ、いや……ぅあ!……あっ、やめっ……!」
男は後ろに埋め込んだ指を小刻みに動かしながら、苦痛のあまり萎えたままの高耶のペニスを強引に扱きはじめた。
性に疎い高耶には、その刺激はあまりに強すぎた。
男の慣れた手管で意志と関係なく無理矢理高められ、あっけなく堕とされて行く。


前と後ろを掌と指で蹂躙され、高耶が目を見開いて背を撓らせ、二度目の精を放った直後、収縮する秘所に、男は無理矢理己を捩じ込んだ。
絶頂の直後のあまりの苦痛に、組み敷かれた細い体が絶叫する。
ただでさえ狭いその箇所が、食いちぎらんばかりに痙攣しつつ、収縮しては男を締めつけ、男も思わず痛みと快楽を同時に感じて声を洩したほどだった。
これまで、どんな女を抱いた時にも感じたことのなかった凄まじい快楽に、男は感嘆の声をあげた。

「……素晴しい。あなたは最高の玩具ですよ、高耶さん」
高耶はすでに息も絶え絶えになっている。
「これから毎晩、死ぬほど可愛がってあげますよ……あなたも、せいぜい二億円分、この体で俺を楽しませて下さいね……」
男は最奥まで繋がったまま、啜り泣くその顔をこちらに向かせ、うっとりと口づける。
交わされた初めての口づけは、高耶が永遠に男の奴隷になったことの、誓約のキスだった。




陵辱は、果てしなく続いた。
ようやく男が高耶を解放した時は、高耶は完全に意識を無くして、ボロ切れのようにその身を横たえ、ベッドは二人分の精液と高耶の流した血でどろどろになって、その凄まじい陵辱ぶりを物語っていた。



激しい雷鳴が室内を照らし出す。
壊れた人形のように四肢を投げ出して、死んだように眠り続ける高耶。
高耶の男の奴隷としての日々は、こうして幕を開けた。


Das Ende?



悩みに悩んで、書き直しに書き直して、ようやくUPできました;長らくお待たせしてしまいましたが(本当に待たせ過ぎや、自分…;申し訳ありません;)HIDOI前夜…いかがだったでせうか?;
この時の直江は高耶さんを「使い捨ての玩具」としか見ていないので、本当に単なる最低の鬼畜ヤローです(笑;
自分が「愛の感じられない単なる鬼畜モノ」が苦手なもんで;書くのにかなり苦労しました;(愛するゆえの無体とかラチカンキンは、もーそれだけで何杯もごはんが食べられるほど大好きなんですが/壊れv)
でも、テーマが「酷い話」なんだから酷くないとってことで、委任状にサインする場所を、直江の屋敷じゃなくてあえて楽しそうな家族連れのいるファミレスにしたりとか…(笑;あと、押捺シーンは自分で書いてて萌えました♪(←バカ;)

この後直江は高耶さんと暮らしているうちに、高耶さんへの愛に目覚めてしまって、死ぬほど苦悩する日々がはじまります(笑)

ではでは、読んで下さってありがとうございました(^^;

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