HIDOI ex.

お仕置き編 BY SHIINA




再び、ビデオカメラを手にした男は、悪戯そうに笑った。

「さあ、これから何をして遊びましょうか?」
襟元を完全にはだけ、裾も激しく乱れて、情事の痕だらけの肩や太腿を惜しげもなく曝したまま、高耶が子供のように嫌々をした。

どれほど今の自分が男を狂わせる姿をしているか、このひとはわかっていないのだろうと、直江は苦笑した。

まだ催淫酒の効果が続いている体で、たった今、放ったばかりのモノを再び煽られ、完全に勃ちあがったところを放り出された高耶は、酷く辛いに違いない。

自分で自分の体を抱くようにして、肩で息をしている高耶を、男はなおも追いつめる。

「先にご褒美をあげたのですから、今度は俺の云うことを聞いて、うんと楽しませて下さいね?ああ、でもその前に、そのぼうやをなんとかしてあげないといけませんね。そんなに大きくして……辛いでしょう?そうだ、コレで撮ってあげる。見ていてあげるから、一人でシテごらん?」

とんでもないことを云い出した男に、高耶はカッと赤くなった。

「やっ、そんなこと……ッ、」
できるわけがない。
「どうして?此処に来る前は、いつもしていたでしょう?ほら、手を伸ばしてぼうやを握って。扱くんです」
「やっ……!」

子供のように嫌々をする高耶に、男は苦笑して、
「さっきまで俺のを玩具にして、あんなに腰を振っていたくせに。できないとは云わせませんよ。それとも、もうあなたは一人でする時も、前より後ろの方がイイんですか?」
「………ッ、」

耳を塞ぎたくなるような淫らな言葉を次々と投げかけられて、高耶は羞恥でどうにかなってしまいそうだった。

「さあ、早く。今更、何を恥ずかしがる必要があるの?此処には俺とあなたしかいないのに。あなただって、そのままじゃ辛いでしょう?」
「やっ、できな……、」

なおも首を振って、何とか許しを乞う高耶に、直江は大袈裟にため息をついた。
「困りましたね……あなたは俺に買われた身だということを、忘れたの?」
「それ、は……、」

云われなくとも、わかっている。この家に来た時点で、絶対服従を誓った。自分に拒否権はない。自分は自分のものではなく、この男のもの。

俯いてしまった高耶の顎を、男はそっとこちらへ向かせ、殊更優しく、しかし念をおすように云った。
「できますね?」

観念したように高耶が微かに頷くと、男は「いい子ですね」と囁いて、高耶の右手をそっと彼のソコに持って行き、彼自身の手で握らせてやった。
その刺激で、高耶がビクッと身を竦ませた。
そうしておいて、直江はさっさと高耶から離れ、非情にもビデオを向けた。

「さあ、高耶さん、はじめて。あなたはイク時、それは淫らなイイ顔をするって、知らないでしょう。後であなたにも見せてあげる。うんと綺麗に撮ってあげるから安心して下さいね」
「………ッ」


「横になった方がやりやすければそうしなさい」と云われ、高耶はもう逆らう意志もなく、力なく畳の上に体を倒した。

はだけた深紅の着物の裾が畳の上に広がり、その上に陵辱の痕だらけの長い脚を惜しげもなく曝した高耶は、本人は思ってもみないだろうが、それだけで男を狂わせるのに充分なほど妖しい色香を放っている。

直江は息を飲み、高耶の傍らに立つと、上から覗き込むようにファインダーを向けた。

ビデオカメラの赤く点滅する小さな光が、録画を告げていた。
撮られている……こんな姿を。

いたたまれなくなり、高耶は思わず顔を背けた。羞恥のあまり、思わず閉じてしまう脚に、容赦のない叱責が飛んだ。

「駄目ですよ。どうして隠そうとするの?今更でしょう?もっと膝を立てて、大きく開いて、すべてを見せて?」
「………ッ、」

ファインダーの中で、啜り泣きながらも、のろのろと立てられた脚が開かれ、高耶のすべてが露になった。

高耶は唇を噛みしめ、観念したように目を閉じて、おずおずと自身を握る手を動かし始めた。その刺激で堪え切れない微かな声が零れた。
「アッ……、」

自らの手が自らに与える刺激に、高耶は目を瞑って耐える。まだ催淫酒の効果の抜けない体は、少しの刺激で火がついてしまい、自分のあまりの浅ましさに啜り泣きながらも、高耶は少しづつ自分を追いつめていった。

声をあげまいと、切れる程噛みしめていた唇から、ついに甘い声が洩れた。
「あっ……、」

苦し気に寄せられた眉。甘い吐息を刻む、少し半開きの唇。大きくはだけた襟元から、喘ぐ度、ちらちらと覗く紅い突起……高耶の、何もかもがあまりに淫らだった。

「あっ、……んんっ、…はっ、……、」
最初は躊躇いがちだった手の動きも、いつしか確実に自らを昂め、追い上げる動きに変わっていき、ついに先端から透明な液体が滲み出して、彼の手を濡らした。

半開きの唇からは、堪え切れない喘ぎがひっきりなしに洩れ、高耶はもう自分で自分を止めることもできず、あられもない姿をファインダーの前にすべて曝して、激しく喘いだ。

感じているのだろう、今の高耶には、男に見られていると云うことも、ビデオに撮られていることも、意識にないのかもしれない。
……或いは、連日連夜、淫らな行為を仕込まれている体は、そうされることで、よけいに感じているのかも知れなかった。

高耶はひたすら絶頂を求め、自身を嬲る手を激しく上下させる。その度、細い腰が男を受け入れるあの時のように妖しく蠢いた。

ふと、手の動きが早くなった。
「アッ……!クッ…、ああっ……!」
瞑られていた瞼が見開かれ、その身が大きく仰のいた瞬間。

「───ッ!」
声にならない声をあげ、ついに高耶が自らの手の中にしろいものを放った。

ピンと伸びた爪先が、畳の上を痙攣するように泳ぐ。その手が、絞り出すように自身をなおも数回激しく扱いた。

すべてを吐き出し、力尽きた高耶の両手両脚が、畳に無造作に投げ出された。
ぐったりした体の、はだけた胸だけが、たった今まで一人で演じていた狂態の名残りを残すかのように、激しく上下している。

その一部始終をビデオに納めた男は、ゆっくりと腰を下ろした。まだビデオカメラは高耶に向けられたままだ。囁く男の声は、感嘆のあまり微かに震えていた。
「……よくできましたね。とても綺麗でしたよ……」

虚ろな瞳がファインダー越しに男を見上げた。
淫らな自分の姿を、男の前であられもなく晒し、その姿をすべて撮られたのだと云う事実が改めて高耶を襲い、眦からスッと一筋、涙が零れた。

男は高耶の額に手を置き、乱れた前髪を指先で梳いてやりながら、そっと囁いた。
「……泣かないで、高耶さん」


高耶は自分に酷い行為を強制し、なおも追いつめるこの男が、自分と同じように苦しんでいることなど、何も知らない。

「愛する」と云う感情など、知りたくなかった。高耶など、気紛れを癒す使い捨ての玩具のままでよかった。そうすれば……苦しまずにすんだのに。

例え高耶がどんなに自分を嫌おうと、高耶には逃れる術がない。そこまで追いつめて、ようやくこのひとと繋がっていられるのだと云う、現実。

今更、愛しているとはとても云えない。まして、できれば高耶にも自分を愛してほしいなどとは。

直江は自分にこんな感情を持たせた高耶を、愛しいと思う同じ激しさで憎いと思った。


たった今「泣かないで」と優しい言葉をかけたのと同じ唇で、男は高耶を嬲る。自分の口が、本当の思いとは反対の、高耶を追いつめる言葉をすらすらと紡ぐのを、男は笑いながら聞いている。
高耶に対し、理不尽な怒りをぶつけるのを止められなかった。

「とてもイイ顔でイっていましたよ。楽しませてくれましたね。ご褒美に、今すぐあなたにもこのビデオを見せてあげる。あなたも自分のイク顔がどんなか、見たいでしょう?」

途端に、高耶の瞳が見開かれ、新たな涙が伝った。
自分の浅ましい姿を見せつけられるのは、淫らな自分の姿を男に曝すより耐えられないと思った。

「も……、許し…、なお……、」
「遠慮しなくていいんですよ。ああ、この部屋にはビデオデッキがありませんね。地下のオーディオルームにでも行きましょうか。二人であなたのいちばん綺麗な顔を、大画面で見ましょうね」

しゃくりあげる高耶を、直江は目も眩む思いで見つめた。

その瞳が自分以外を映すのも、その唇が自分以外の名を呼ぶのも、自分以外の誰かを思うのも、許さない。自分をここまで狂わせた罪を、このひとは償わなければならない。

そんな風に泣いて見せても、許さない。もっと泣かせてあげる。そして、あなたが俺のものだと云うことを、その体に刻み込んであげる。

永遠に心が手に入らないなら……せめて、その体に。
……何度でも。


To Be Continued...




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