白い獣


BY k−330さま



 白い部屋の中、男は白い獣を抱く。

 欲望に掠れた喘ぎ声が清浄な空気の流れを乱している。
 抱かれる度に何度も繰り返して吸われて赤い痣になってしまった箇所をまた甘噛みされて、獣は四肢をビクリと痙攣させた。

「あ……アッ、ヒ……」
 高耶はもう三度、男の指の動きだけでイカされていた。それでも欲望は底無しに男を求めていた。
「な…、なおえ…ッ」
 もっと…と、高耶は躰を揺らして訴える。もっと鋭い刺激が欲しくて―指でない、もっと躰の最奥まで―限界まで穿つ残酷なものが欲しくて……

「どうしたの? まだ、足らないの…?」
 知っていながら、男は肝心なものを高耶にやろうとはしない。欲しがる高耶を揶うように―嬲るように指を滑らせ、耳を噛み、十分に昂ぶったものを強く抜いた。
「ア…アアッ……ッ」
 追い立てる刺激に悲鳴を上げて、再び高耶は達した。その余韻を味わう間もなく男の指は容赦なく躰の奥を分け入ってゆく。

「なお…えッ! もっ…っ、」
 堪えようのない欲望に、高耶はとうとう音を上げた。涙を流して許しを欲する高耶を、男は喉の奥で笑った。
「欲しいの…? 高耶さん――?」
「欲…し、いっ!」
 考える余裕もなく、ソレをねだる高耶に、直江は表情を甘く崩した。
「欲しいのなら…、云ってみて」
 抱く腕の強さに身悶える躰を更に戒め。渋って、自分から男のモノを導こうと伸ばした腕を引き剥がしてシーツに縫い止める。
「欲しければ…高耶さん、私を、アイシテイル―と、云って……」
(あ……?)
 快感の縁から、高耶は一瞬正気に立ち戻った。

(アイシテ・イル…)
 それは。正気ではとても口に出せない――羞恥と気後れを齎す言葉。

「どうしたの、高耶さん。――欲しくないの?」
 あられもなく開かれた脚の付け根を舌で舐め上げ、男は残酷な甘い仕打ちで高耶を即した。
「なお…っ、なおえぇ……ッ」
 首を振って、背筋から駆け上がってくる振り切ろうと獣は足掻く。
「さあ――高耶さん、いい子ですね……。これが、欲しいんでしょう…?」
 高耶は、秘所に触れた熱く固いものを欲して、男の躰に足をきつく絡ませた。自分からそれを飲み込もうとする高耶を、
「まだ…、駄目ですよ、高耶さん」
 冷たく、男は制する。
 腕の中、身悶えて足掻いても許さない。
 焦らされて―――耐えられず、
「……シテ…ル……」
 高耶は、直江の胸に頬を擦り付けるようにして、やっと云った。
「聞こえませんよ、高耶さん」
 苛めるような男の言葉に、高耶は唸った。
 それでも、堪え切れずに命じられた言葉をもう一度唇に乗せた。

「アイ……シテル…、なお…え…、」
 とたん――、突き破るようにソレは押し入られた。
「ひっ……ああっ…あ……ッツ!」
 散々焦らされた挙げ句の、骨が軋むような快楽に高耶は我を忘れ、直江の首にしがみついて喚いた。
「やっ…ひ……アッ、アアッ―――ッ」
 突き抜けるような痛みと快感に、高耶は喘ぐ。
 全身で直江を求め、奥深く欲望をくわえ込んで喜悦の声を上げる高耶を愛しげに見下ろして、直江は囁く。
「高耶さん……、愛している――…」
「…ひ……ぁ…、」
 情欲に流される高耶は、耳元に囁かれた言葉の意味を解さない。
 直江は、そんな高耶を笑うように口の端を上げ、はち切れんばかりに膨れ上がった高耶の分身を更に追い上げるように深く内部を突き上げた。

「アアッ‥‥アッ‥ヒッ‥‥」
 鞭のように蹂躙される躰が跳ね、閉じることを許されない両足がガクガクと痙攣する。
 狭くてきつい孔を何度も何度も繰り返し突き上げて、男は獣の官能を翻弄し、同時に己の欲望をも絶頂へと追い上げていく。
「……ひ…っ、」
 最奥の一点を男の充実した肉が突いた時、高耶は目も眩むような絶頂感と共に逐情した。
 逐情した瞬間の内部の締め付けに男もまた絶頂を極め。白いモノを獣の内部に吐瀉した。

 はあはあと、絶頂の余韻に躰を弛緩させて喘ぐ獣を、だが、男は許さなかった。
 再び力を取り戻して固く反り返ってくるモノを、そのままゆっくりと抽送させはじめた。
「や…っ、も、ゆるし……て、」
 高みから突き落とされたかのような絶頂からの失落の後には、泥のように疲れきった躰が残るだけ。これ以上、追い上げられたら、どうにかなってしまう――

 力なくもがき、男の下から逃げようと足掻く獣。
 それを男は淫猥な眼で見下ろし、いとも容易く獣の四肢を押さえつけた。
 もがく獣の背に圧し掛かり、救いを求めるように伸ばされた腕を捕らえて、床に縫いとめた。
「まだ…許してなんかあげませんよ…」
 ――私はまだ、あなたを十分堪能してないんですよ……?
 ――あなたをもっと、タベサセテ……
 男は、獣の震える耳に残酷な囁きを吹き込み、濃厚な愛撫を再開させた。

 そして、男の要求の激しさを受け止め切れず、獣は細く喉を鳴らして、意識を闇へと飛ばした。




 私の愛しい、白い獣―――
 あなたを私だけものにしよう。
 あなたを決して切れることのない鎖で繋いで、
 私だけを欲しがるように調教しよう。

 私の杭であなたを穿って、
 私なしではいられない躰にしてしまおう。

 その眼に私だけが映るように、
 私だけが知っている場所に閉じ込めて、
 私の訪れだけを待つようにしてやろう。

 それを望んだのは、他ならぬあなた自身なのだから――――



         
end




*椎名コメント*
K−330さまからの素晴しい頂き物です♪
当サイト30000HITのお祝&椎名の慰安に下さいました(><)

シテほしくて(爆)直江の胸に頬を擦り付けて「アイシテイル」と云う高耶さん・・・かっ、かわいい・・・(死)
これから高耶さん、直江にしかわからない場所に閉じ込められて、直江の訪れだけを待つ体になっていくんですね・・・(うっとり)

K−330さま、素晴しい作品をありがとうございました!!


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